ではみなさん 

こんにちは。
青い青い空の下、蝉の声がずっと聞こえています。

先日のゼミの時に、学生さんがみんなに紹介してくれた詩。
とてもよかったので、ここにご紹介いたしますね。



   黒板          高見順


 病室の窓の
 
 白いカーテンに
 
 午後の陽がさして

 教室のようだ

 中学生の時分

 私の好きだった若い英語の教師が

 黒板消しでチョークの字を

 きれいに消して 

 リーダーを小脇に

 午後の陽を肩さきに受けて

 じゃ諸君と教室を出て行った

 ちょうどあのように

 私も人生を去りたい

 すべてをさっと消して

 じゃ諸君といって 



これは、高見順さん最後の詩集『死の淵より』に収録されている作品です。
当然この詩には、死に向かう作者の気持ちを読みとるべきところなのでしょう。

でも、学校の先生である私にとって、印象の強いのは、
陽のあたる午後の教室の風景や、この若い英語の先生の姿でした。

満足できる内容の授業を、よい時間にちょうど終わらせて、本をパタンと閉じ、学生さんを見渡して、

じゃあ諸君、

なんて言いながら教室を後にすること。

そんなことは、なかなか出来るものではありません。

私なんぞは大体、授業の終わり頃になって、言い忘れたことなどをあくせく早口でしゃべったり、(ひどいときには少々延長)、
もっと情けないことには、時折内容の浅~い授業をしてしまいます。
その上そういうときに限って、知ったかぶりなセリフを口にしてしまったり。
ああ、穴があったら入りたい。

日々こんな思いをする人も、世の中には必要なのだと言い聞かせつゝの先生稼業。
毎日の生活だって、バタバタやらいいかげんやらばかりです。

じゃあ諸君、

この言葉には、
そして、黒板の字をご自身で消してから教室を出られるところにも、
授業を聞いてくれた生徒たちに、人として対等に接しようとなさる、この若き先生のご姿勢が表れているように思います。

ああ、いつの日か私も、

黒板消しでチョークの字をきれいに消して、

午後の陽を肩先に受けながら、颯爽と教室を出て行く、

そんな風になりたいなあと思います。


ではみなさん、ごきげんよう。

なんて言いながら。








[2012/07/28 13:20] 教育 | トラックバック(-) | CM(4)

こんにちは。

私もここさんのように、
高見順さんの詩からは、さっそうと教室を去る教師の
肩先に当たる陽の印象が強いです。
私は高見順さんの愛読者でもありました。
特に「いやな感じ」という作品は何度も繰り返し読みました。
もっとも太宰、織田作といった堕落派に随分影響を受けたからでもありますが・・・。

ここさんからは、赤毛のアン先生のような温かな陽の光を感じるのですが(笑。

チョークといえば、昔とても尊敬していた教師がいました。その教師のことを40年後に俳句にしてみたのが、
下の句です。

白墨も折れよとばかり多喜二忌と

こういう熱血の教師がいたのです。
お粗末・・・
[2012/07/29 16:49] NANTEI [ 編集 ]

NANTEIさん、こんにちは。

先生についての40年後の御作、ご存じではないところで、ご自身の姿が教え子の中に残ってゆくということが、かたちになって表れたようなお話、御作ですね。
先生の、お力あふれるご様子が、目に浮かぶようでした。
私はとてもそんな記憶に残る教師ではありませんが、それでも、怖いような嬉しいようなお話だと思ってうかがいました。

私はお恥ずかしいことに、未だ高見順の著書を読んだことがありません。それに今まで、詩人として詩を書いていたことも存じませんでした。
「いやなかんじ」教えてくださって、ありがとうございました。
[2012/07/29 18:01] ここ [ 編集 ]

ここさん、おはようございます。

ずいぶん昔?に、この詩集を手にして、
"旅は、帰れるから楽しいのであり・・・"
(うる覚えですが・・・)
ということばが、痛くのこりました。

この記事、この詩の風景、拍手を重ねて押したいですね!
(2回目であっさり、断るんです、FC2(笑))

ぼくには、ここさんの姿がかさなりますよ~smile♪
[2012/07/30 07:02] コスモスの夢 [ 編集 ]

コスモスの夢さん、こんばんは。

この詩、とても有名なのだそうですね。
いろいろ思い出されるよすがになりましたのでしたら、とても嬉しいです。

この詩集のなかには、旅についての詩もあるのですね。
私は、上の詩の他に、あと二つだけ読みました。
やはりこの詩が一番好きでした。
きっと、学校の光景が描かれているからだと思います。
短絡的な読み方です。

コメントをありがとうございました。


[2012/07/30 21:11] ここ [ 編集 ]

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する