梅雨晴れ間 

こんばんは。
今日はいいお天気でした。
いかがお過ごしでいらっしゃいましたか?

木曜日のことです。

あれ?
新品の自転車がパンクです!

困ったなー。
ちょっとした勇気を出して、近くの、ちょっと怪しげな自転車屋さんに駆け込みます。
このお店では、どう見ても中古の自転車が、電動機付き自転車となって売られているのです。
マジックで書かれた手書きの値札。

あのー、パンク治していただけますか?

お店から出てこられたのは、感じのいい奥さんでした。
お庭の向こうの作業場に、自転車を持って移動です。

作業場の奥からご主人が出てきました。
奥さんが、扇風機の前のパイプイスを勧めてくださったので、私も中に入ります。
パイプイスに座ってから見まわすと、作業場の中は、全体に油で黒々。
壁には、自転車のチューブや、工具や、部品みたいなものやら、何やらかにやらがぶら下がっています。
昔ながらの自転車屋さんです。

ご主人が、無言のまま、早くも私の自転車のチューブをはずして、水に漬けています。

勢いよく段を下りたか何かしたでしょ、と奥さん。
へへへ(そのとおりです)。

奥さんは、明るい方のようでした。

そこへ、その庭先に、この頃よく見かける「日本財団」と書かれた大きなワゴン車が入ってきました。
奥さんも、そしてご主人も、修理の手を止めて、ゆっくりワゴン車の方へ。

車の扉が開いて、施設の人、その後ろに続いて、大柄な若い男の人が下りてきました。
ただいま帰りました、と施設の人。
奥さんとちょっと立ち話。
扉の開いたままの車内に、障害のあるらしい大人の人がたくさん乗っているのが見えます。

ワゴン車が帰ると、奥さんが付き添って、階段のところまで。
たぶん息子さんなのでしょう。
その後ろにご主人。

息子さんは、杖をつきながら黙って階段を登っていきました。
私はじっと、ゆっくり階段を登ってゆく息子さんの姿を目で追っていました。

ご主人が仕事場に戻ってきました。

私らの息子はねえ、スポーツしよって、障害者になってしもうたんよ。
息子さんは、中高生の時から、ボクシングの選手だったのだそうです。

大学で仲間を集めてボクシングサークルを作ったこと。
就職して名古屋に行ってからも、趣味でボクシングを続けていたこと。
寮で倒れていたのに誰にも気付いてもらえなかったこと。

大変な手術で生き返ったこと。
すっかり小学生の子どものようになってしまったこと。

一日家にいても、刺激がないから、施設のデイサービスに行っていること。
昔覚えたことは今でも覚えていること。
何かを教えようと思っても、集中力が続かなくて、親も子も、怒り出してしまうこと。

そういう運命だったんかねえ。

アメリカの俳優で、落馬して半身不随になった人が、リハビリするうちに奇跡的に回復した話。
ああいう人はお金があるから、リハビリとか、治療とかにいろんな人が雇えるだろうねえ。
ご主人のお話の中の、遠い、本当にかすかな希望に、とても嬉しくなってしまう私。

パンクの修理はとうに終わっていました。

ほら、そこに本があるでしょ、本が好きな子だったんよ。
今でも漢字が読める。
作業場の隅の机の上にあったのは、古い、子供用の歴史の本でした。

淡々とした話し方。
苦笑いのような、奥さんの笑顔。

前のタイヤに、もうちょっと空気入れといてあげるね。
奥さんが、また自転車を作業場に戻します。

ご主人が、何度も帽子をとっては、額の汗を、首に書けたタオルで拭います。

おいくらですか?
1200円。

ありがとうございました。

またおいで。
パンクしてなくてもね。

は~い。

自転車のペダルが、とても軽くなっています。
お店も、自転車に乗った私も、夏至を過ぎたばかりの、長い長い夕暮れの中にいました。






[2011/06/26 00:52] 日記 | トラックバック(-) | CM(2)

こんばんは
お元気でいらっしゃいますか
自転車のパンクによって
又素敵な御夫婦との出会いがあったのですね
知らず知らずにそう言う運命的な時間の流れになっていたような気がしますね。
ここさんは不思議な方ですね
優しいここさんだから、そういう引き合いがあるのですね。
もしかすると、同じお店に行かれた方でも
息子さんに会われた方でも
このように私たちに優しさを頂ける記事にはして頂けなかったかもしれませんよね
ありがとうございました
最近孫と娘のお世話で少々疲れ気味でしたので
今夜、又優しさの充電させていただきました(*^_^*)

↑鈴木三重吉さんの菩提寺だったのですか!
こちらも又ご縁ですね
ほんとに、ほんとに不思議で、そして素敵です
[2011/06/28 00:32] Hulaさん [ 編集 ]

Hulaさん、こんばんは。

お嬢さんとお孫さんのこと、本当にお疲れ様です。
私も、出産のため里がえりして過ごしたしばらくの間、本当に幸せでした。今思うと、母はさぞ大変だったろうと思いますが、その時は自分と赤ちゃんのことで頭がいっぱいで、あまり気がついていませんでした。その間、母と意見が合わなかったり、出産後の疲れで思うようにならなくてイライラしていたりということもあったようにも記憶しています。
赤ちゃんを連れていよいよ戻る時は、本当に寂しくなって、泣いてしまったんですよ(笑)
Hulaさんどうぞご無理なさいませんように。息抜きもなさってくださいませね。
[2011/06/28 21:50] ここ [ 編集 ]

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