管弦祭 2 

こんにちは
ピッカピカの暑い日に、夕方が来ました。
空にほんの少しだけある雲が、秋の雲なのが不思議なくらいの暑い日でした。

少し間が空きましたが、管弦祭続き、その夜のお話をいたしましょう。

厳島神社を出て行く管弦船を見送ってから、大急ぎで宿に戻りました。
夕方島を出た管弦船は、対岸の地御前に渡って、また島に戻って来ます。
それまでの間に、お夕食などをすませるのです。

私の御同室はUさんでした。
Uさんと同じお部屋になって、ちょっと嬉しくなりました。
Uさんは、いつも素敵なお洋服を着ていらして、時々はちょっとした工夫の手作り。
お話がいつも楽しくて、明るい方なのです。
その日も洒落た黄色いワンピースのアンサンブルでした。

宿に着いてみると、Uさんはもう先にお部屋に戻っていました。
私は大あわてでお風呂へ。
急いでお風呂から上がってきた私が、あんまり早かったというので、Uさんはびっくり。
見かけによらないのだそうです。
Uさんといるとね、なんだかとってものびのびしてきて、精神的体育会系の部分が出てきちゃうんですよ。
自分でも忘れてました。

対岸の地御前を出た管弦船は、夕闇の中、まず長浜神社に向かいます。
長浜神社では、皆が提灯行列になって、船を迎えるのだそうです。

お夕食をいただいているうち、少し遅くなってしまったので、長浜神社の提灯行列を見に行くのは諦めることに。
それから部屋で少しおしゃべりをしました。
聞いてみるとUさんは、母と同い年なのでした。
私は修学旅行の夜みたいに、ちょっとだけ秘密の話をしました。

私たちは、ゆっくり宿を出て、そのあとに来ることになっている大元神社に向かいました。
大元神社は、明かりが灯されていましたがまだ誰もいませんでした。
船が着く浜では、消防の人が篝火の準備をしていました。

紅白の提灯が配られました。
その時にそこにいたのは、10人足らずでした。

私たちは、それぞれおしゃべりをしながら、何となく待っていました。
人が少しだけ増えました。
海はまっ暗で、何も見えませんでした。
真上辺りに見える月が、光ってとてもきれいでした。

管弦船の船団が来ました。
華やかに飾った阿賀の船、14人の漕ぎ手が操る江波の漕伝馬船。
それぞれの船の、それぞれに飾り付けられた提灯の明かりが、暗い海の上をこちらにやって来たのでした。
近づくと、地御前の船には、高々と「厳島御用」と書いた提灯が掲げられていました。

不覚にも、その時の管弦がいつ始まっていたのか、江波の漕ぎ船の木遣り歌がどんなだったか、少しも覚えてなくて、
ただその船々の灯りと、
自分が手に持った提灯の明かりだけが、今も記憶の中でゆらゆらと揺れています。

他の社殿の前でしたのと同じように、御座船は、大元神社の社の明かりと、岸にいた私たちの少ない提灯の明かりとの前で、ゆっくり大きく3回まわっていました。

暗い夜の中で、千年近くもの間行われてきた祭が、今年も行われていました。
それは、見に来ている人のためでもなく、誰のためでもなく、ただお祭りとして行われていました。
役に立つとか、残さなくてはならないとか、そういう次元でなく、誰かが行わなければならないお祭りでした。

それから船は、厳島神社の本殿の方へと岸を離れて行きました。
私達は、船を追いかけて、急いで本殿に向かいました。
本殿はもう人でいっぱいでした。

クライマックスは船が狭い社殿に入ってくるところと、枡形で伝馬船がまわるところです。
阿賀の水主衆は、そろいの黄色い腹巻きに、派手なはっぴや、茶髪金髪、見ただけで威勢がいい漁師らしいさんたち。
江波の衆は紅白のはっぴ。
行き来する神官の数も相当です。

本殿前での管弦やら、江波の漕伝馬の櫂さばきやら、見ている人々の拍手、鳳簾から取り外された金の鳳を持って歩く阿賀の水主の赤ら顔とか。
これに触ると縁起がいいというので、その辺りにいた人は大騒ぎ、こっちこっちと呼ぶ大声。

海に浮かぶ広い社殿とその海は、それぞれの人の、てんでの思いや声や動きを雑多に乗せたまま、祭はずっと祭として行われているのでした。

鳳簾が元に納められ、もう一度拝礼があって、管弦祭は終わりました。

ほとんどの人が引きあげていく中、端の方には寝転がっている人がいたり、酒盛りをしているところもあったり、浴衣を着た外国人が盛んに写真を撮ったりしていました。

Uさんが、帰るよって声をかけてくれました。
昔こういうふうに帰るよって言われるまで遊んでいたことがあると思いました。

今ではすっかりわがままに慣れた私は、そのあと一人、後片付けを見てから帰りました。

ふりかえると、たくさんの灯籠に照らされて、神社が海に浮かんでいました。


十七夜月中天に還御の笛     U

夏惜しむ還御の潮へ灯を零し   U

阿賀衆を束ね紋付きサングラス  ここ

堤灯の灯のほかは闇祭舟     ここ




[2009/08/19 17:01] 日記 | トラックバック(-) | CM(2)

ここへコメント書くの初めてのような気がします。
久々に覗いてみたら、もう既に懐かしくなっている、あの日の、あの夜のことが、目の前に現れました。短い十七文字では現されない、さまざまなあれこれが一挙に甦ってきました。真面目なMさんとのやりとりなど、なんだかにやにやしてしまったり、のんびりしてるようで、ユーモア精神の豊かな、ここさん。先は長いし、豊かさをしっかり養って、素敵な教育者になれるわよ。

[2009/08/26 11:49] yuu_i88@ybb.ne,jp 石田 游 [ 編集 ]

きゃー、ゆうさんこんばんは~。
いつもお越し下さってありがとうございます。コメントとても嬉しいです。(ゆうさんの漢字が出なくてひらがなです。すみません。)
管弦祭の日のこと「もう既に懐かしくなっている」なんて、さすがはゆうさん、お忙しい毎日をめまぐるしくお過ごしなのだろうと想像いたしました。イベントの少ない日々を過ごしている私にとっては、今もまだ余韻が深く残って、ついこの間の出来事のような気がしています。
その節は大変お世話になりました。また楽しいこと、ご一緒できるといいなと思っています。
Nさんご夫妻は昨日から静岡だそうです。皆さん活動的ですごいなあと感心することしきりです。
季節の変わり目、どうぞお気をつけくださいませ。
[2009/08/26 22:10] ここ [ 編集 ]

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