管弦祭 1 

おはようございます。
曇っては小雨の涼しい朝になりました。

先週のことですが、宮島の管弦祭に行ってきました。
夜中まで続くお祭りですので、宮島に一泊しての見学です。

このたびは俳句会のお仲間と一緒です。
一行は25人ほど。
遠くから見えた方もいらっしゃいました。
俳句はずっとやめていたので、こういう会に参加するのはとても久しぶりのことでした。

まずは夕方、何人かで、管絃船が厳島神社を出発するのを見にでかけました。
御鳳簾と管弦の神官さんを乗せた御座船が大鳥居を通って海に出て行きました。

私は初め皆と一緒でしたが、干潮の浜を出て行く御座船を追って海に立つ大鳥居の近くまで行ったりしているうち、
いつのまにか横浜から来られたMさんと二人になっていました。
Mさんは初対面の人で、私より一回りくらい年上に見えました。

私たちは少しぎこちなく話しました。
私も、きっとMさんも、初めての人とうまく話すのは苦手なのでした。

Mさんが、『管弦祭』という小説を昔読んだことがあると言われました。
私は読んだことはありませんでしたが、その小説があることは知っていました。
作家の名を言おうと思ったけれど、思い出しませんでした。
そうしたら、Mさんも作家の名前がどうしても思い出せないと言われました。
二人でしばらく考えましたが、思い出せませんでした。

西日の中、飾りをいっぱいつけた漕ぎ船が、御座船に近寄っては遠ざかるのを繰り返していました。
潮が次第に満ちてきて、船を追いかけて鳥居の先まで行っていた私たちの足元に潮が迫ってきていました。

私は靴が濡れてはいけないので、少しずつ後退しました。
見ると、私の前にいたMさんのサンダルを履いた足は潮に浸かっていました。

Mさんの足に、小さな波が寄せているのを見ながら、
学生時代の私なら、靴など濡れるのも構わず、船を見続けていたろうと思いました。
Mさんが私で、今の私はあの頃の他の誰かだと思いました。

浜から上がって、二人で岸に腰かけて、海に出てゆく管弦船を見ました。
大きい鹿と小さい鹿がまだ浜にいました。
管弦船は、今の時代では考えられないほど、ゆっくりと進んでいました。

管弦船から、管弦の音が聞こえています。
西日の中に、平安朝風の旗が何本も翻っているのが見えました。

私は急に何だか思いついて、声を出しました。

竹。
竹の字が入っていたような気がする。

竹西寛子!
Mさんが小さく叫びました。

私たちときたら、手を取り合う喜びようでした。
Mさんの真面目さが、潮が満ちてくるように私の中に沁みてきました。

管弦船は、いつの間にか遠く見えなくなっていました。


杓文字屋の鹿戸をくぐる赤蜻蛉  M子

御座船を待つ神主の扇風機    M子




[2009/08/13 11:39] 日記 | トラックバック(-) | CM(2)

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[2010/07/27 17:59] - [ 編集 ]

鍵コメ様

> 管弦船・管絃船 どちらが正しいのですか?
> 教えてください。

こんばんは。
コメントありがとうございます。

2つの違い、全然気がついていませんでした。
どちらが正しいということがあるのかどうかも存じませんが、
考えてみると、「弦」は弓のつるですし、「絃」は張ってあるつるという意味ですから、実際にお祭りで使われている雅楽の楽器を考えると、「絃」なのでしょう。
竹西寛子さんの小説も『管絃祭』のようです。
ご指摘、ありがとうございました。

何事も、大雑把なところがあって、そのせいでよく失敗をいたします。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。




[2010/08/01 21:46] ここ [ 編集 ]

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