旅日記 水戸弘道館 

こんにちは
カエルの声がとぎれると、ホトトギスが聞こえます。
夜中も朝も鳴いています。

水戸、弘道館に行きました。
弘道館は、幕末に近い頃の藩主、水戸斉昭の建てた藩校です。
実は、歴史好きの谷口君と、事前に調べた私しか、「弘道館」を知りませんでした。
その日は小雨が降っていましたが、若い学生さんたちと5人で行ってみることにしました。

それは水戸駅からほど近いあたりにあるようでした。
代表的な史跡なので、もっと案内してもいい筈なのですが、
案内はかなり控えめで、坂道を上りながら、たいしたことない場所だろうという予感がいたしました。

立派な門。
ここじゃない?などと言いながら、その門を入って、青梅の実る庭を通って、入り口へ向かいます。
入場料金190円。
行ってみると、かなり大きくて、風格の有る建物でした。

靴を脱いで上がって、5人ぞろぞろと建物の中を見てゆきます。
目に触れる一本一本の柱が太くて、全体にがっしりした木造建築です。
天井が高いせいか、廊下も大広間も小さい部屋も、全部が広くて、堂々としています。

右手の展示室になっている部屋の入り口に、小さな犬のような黒っぽい人形が一対置いてありましたので、気持ちが引かれてじっと見ていましたら、向こうで他の4人が「だあれ、順路守らない人~」って私のことを笑っています。
よく見ると、向こう側から先に見て、最後にこの黒い犬の前に来るようになっていました。
「え~、気付かなかったー。ちゃんと順路守ろうという気持ちはあるんだよー。」
などと騒ぎながら、5人ぞろぞろ次へと移っていきました。

ある程度すすんだとき今来たのと逆向きに「順路」という札があるのに気がつきました。
「あれ、みんな間違ってたみたいよ~。」
「自分たちは正しいって思いこんでるのが怖いねー。」
笑いながらも反省する謙虚な学生さんたち。

雨のせいか、他に訪れる人も少なくて、弘道館は、広々として、静かでした。
当時の学生さんたちが使ったらしい風呂場やトイレもありました。
以前に行った足利学校では、学校の厳しさを感じましたが、時代が違うせいでしょうか。
ここでは、厳しさよりも、きっと勉強好きも、やんちゃも、いろいろいただろうなっていう、違う意味で学校らしい雰囲気を感じました。

大広間に出ました。
かなり広い部屋でした。
その広い床の間の中央には巨大な掛け軸が下がっています。
そこには、一文字1メートル四方もありそうな大きな文字で二文字、

「尊攘」

びっくりです。

思わずじっと見てしまいました。
やっぱりびっくりです。

「尊皇攘夷」。
日本国中、今では誰もが、それは現実的な案じゃないって思っています。
未だに本気でそんなこと言ってるの。
分かってなさ過ぎだよ。

力強くて明るいたくましさのあるいい文字です。
微塵も迷いがありません。

驚きながらそこを離れ、しばらくすすむと、廊下の長押に、これまた大きな額に

「淤於藝」(芸に遊ぶ)

論語からの一節だそうです。
「子曰く、道に志し、徳に拠り、仁に依り、藝に遊ぶ」
学問と人格を鍛え、そして芸に遊ぶことも必要というわけです。

ふう。

帰りに鄙びた売店をのぞきましたら、30年前からずっと置いてありそうなおみやげ物の中に、これを刻んだ青銅の文鎮が売られていました。
ちょっと食指が動きましたが、さすがに文鎮は重いのであきらめて、三つ葉葵の印籠ストラップだけ買いました。
田舎っぽい売店のおばさんが、その印籠ストラップを、彼女に似合わぬ風雅な包装紙の袋に入れてくれました。

こうした方がいいかどうか、そうすればうまくいくかどうかでなくて、

そうあるべきかどうか。

「時代錯誤」っていうと悪口になりますから違います。
「古いものを大切にする」っていうとアンティーク趣味になるので、これも違います。

うまく言えませんが、「尊攘」の似合う、「弘道館」、そして水戸の街なのでした。



[2008/06/09 21:17] 旅日記 | TB(0) | CM(4)

おはようございます。

こんな時刻にネットしてるのは、仕事明けの泥棒かお尋ね者のタクドラしかいません。フフフ。

一連の旅日記を拝読、どれも面白かったです。なかでも、この『水戸弘道館』のが好きですね。なぜなのか、よくわかりません。あ、そーかあ。「よくわからない」だ。
ほかのでも、ひろい公園でウロウロしてしまう「よくわからない」ここさんがいて、面白かったんです。そんな風な「よくわからない」は、どんな旅日記でも面白さの中心だったりするんでしょうか。ですが、この『水戸弘道館』の「よくわからない」、場所っていうより人? 
大広間の掛け軸に圧倒されたここさん、1メートル四方はありそうな文字を、2個も目に入れようとデッカく目玉を開きます。が、文字の意味がわかった途端、こんどは点に。この様子が、段落をあけて、たった四行で書き抜かれてます。なので、漫画の吹き出しを読んでるみたいに、対応する絵を勝手に思い浮かべてまた面白かった。こんなところ、ばななの影響もあるかな、ないかな。俵マチおばさんの影響じゃないな(チョット嬉しい)。あんまり女性作家の小説、漫画は読みません。この辺が限界、ストップ・モーション。
この「よくわからない」、そのデカい文字環境に生きた人たちなんですよね。ということが、言葉を探してる最終の二行からわかってきます。『水戸弘道館』を訪れた事件が、一種のカルチャー・ショックみたいなものとして、ここさんの中に残響していますから。重い文鎮をストラップに替えたここさん、とっても不思議な人ですけど、「30年前からずっと置いてありそうなおみやげ物」を並べる売店の、た田舎っぽいおばさんも、かなり不思議な人物。
人の不思議との遭遇を描けてる旅日記-その三が、一番好きです。
東京を通過していかれたんですね。ふーって通りすぎていった風のわけがわかりました(笑)。
[2008/06/16 08:51] wordblow@mail.goo.ne.jp わど [ 編集 ]

わどさん、おはようございます。
旅日記、ほめてくださってありがとうございます。わどさんは、いつもとても丁寧にお読み下さって、わかりやすくコメント下さるので、ほめられてるって実感がわきます。とってもうれしいです。
水戸、いらしたことおありですか?時代劇ファンの私としては、西山荘も行きたかったのですが、時間もなくて断念しました。まあそれなりに旅を満喫いたしました。
「舟の上に生涯をうかべ馬の口とらへて老いをむかふる物」って、今ならタクドラさんですよね。「日々旅にして、旅を栖とす」。由緒正しい風雅の道ですね。旅もいいですね。
[2008/06/16 10:45] ここ [ 編集 ]

おかげさまで。

お久しぶりにお邪魔しました。

ここさんとご一緒に水戸の旅を楽しむことができました。3週間遅れでしたが。

いつか、家族で行けたらと思います。江戸末期の学生たちの姿と2008年の5人の若い皆さんの楽しいご様子がオーバーラップされること間違いありません。
[2008/06/21 08:51] - [ 編集 ]

こんばんは。
コメント下さって、ありがとうございます。
「いつか家族で行けたら」って思うこと、幸せなひとときですよね。私も、水戸でそう思いました。
極楽とんぼな学生生活、極楽とんぼなりの悩みもあったりするところが、江戸の学生さんたちも同じだったかなあと思ったりいたします。
どうぞまたいらしてくださいませね。
[2008/06/21 18:18] ここ [ 編集 ]

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://coco104.blog91.fc2.com/tb.php/301-57abd687