旅日記 偕楽園その2 

こんばんは
今日もカエルの大合唱が始まっています。
昨日と同じカエルたちが鳴いておりますやら、どうですやら。

お話は昨日の続きです。

どのくらい歩いたか、もうすっかり分からなくなった頃、私はようやく好文亭に着きました。
入場料は190円。
待合いがあって、お茶のための建物としては大きな家です。
靴を脱いで、薄暗い室内へと入ります。
ぐるりと、たくさんの部屋がいろいろな小庭に面しています。
部屋毎に、萩の間とかつつじの間とか、花の名がついて、ふすま絵がそれぞれの花の絵になっておりました。
日曜日でしたから、観光客も多くて、私もそれについてぞろぞろと見て回って、また外へ出ました。

もう帰ろうと思いました。
入場料を払った入り口で、帰り道を尋ねました。
初めのバス停は、主要なバス停ではないと思ったので、メインの出口とバス停を聞きたかったからです。
しかし、聞いてみると、一番バスが来るのはあのバス停だということでした。

内心驚きながらもお礼を言って、ふと見ると、右手に園内の地図が置いてあります。
こんなところに…。
ここまできた人には地図は要らないではありませんか。
私だってもう地図は要らないけれど、さんざん歩いたので、なんだか欲しくなって一枚いただきました。
その地図を手に持ったまま、入ったくぐり門とは違う右手の門から出ました。
すれ違う人が、「ほら、あの人地図持ってるよ」言っているのが聞こえました。

名残に門をふり返りました。
ん?
「茶の湯 無料ボランティア  担当 遠州流」
お茶席、お抹茶、無料!
そんなのあったっけ?

考えるより先にスタスタと引き返して、再び好文亭入り口に。
「門のところで見たんですけど、そういうの、ありました?」
「さっき見てきたところですけど、やってましたよ。」

おかしいなあ。
ちょっと笑われたような気もしましたが、「もう一度どうぞ」と言われて、また亭内を歩きます。
あ、さっき狭くなってて、入っちゃいけないのかと思って行かなかったところに人が入ってる。
もう、書いといてくれればいいのに。

その狭い廊下を進んでゆくと、ぱっとお庭が開けて、広い板間がお茶席になっていました。

しばし茫然としていたような気がいたします。
後ろから、「お一人でしたらまだ入れますよ」って、ふり返ると袴姿の男の方。

言われるままに入れていただいて、端っこの席に着きました。
すでにお手前は始まっていました。
半頭さんも若い男性で、朗々と響くお声で、お茶のいただき方など、解説が始まりました。
お客さんは、みなさんじっと聞いています。
お手前は、これもきりりとした男の方のお手前なのでした。

そういえば、今まで行った観光地は、こういう機会はあっても、ただお茶を出してくださるだけ。
それはおそらく、知った風に説明するのも恥ずかしい気がいたしますし、来られた方も聞きたいかどうかわかりませんし、知らない人にこの場だけでちょっと説明しても、なんというか、仕方がないのです。
だからよく見かけるのは、お客さんがお手前中でもどんどん入ってきて座ったり、お茶をいただいたらさっと立ち上がって帰ってゆく光景。

袴姿の半頭さんの解説が続いています。
「お楽に」と言われても、足を崩す人は誰もいません。
「足がしびれた方は、こうしてつま立てて。」などという説明も入ります。

そのうち、お茶碗の拝見の仕方についての説明になりました。
こんなところで、拝見まで?

やがてお茶がたちました。
気がついてみると、私の席はなんとお正客。
目の前で点てていただいたお茶が運ばれて参りました。
そして、そのお茶は、本当においしいお茶でした。

見知らぬ観光客相手に、こんなにおいしいお茶。
私は心を込めて一礼しました。
お茶碗も、素人目にもよいお茶碗でした。

通りすがりの者に、心づくしのもてなし。
それに価する人間かどうかとか、見返りがあるかとかとは関係なく、もてなしとはそうするものだという信念みたいなもの。
もし、相手が茶の湯を知らなかったら教えればいい。

上等なお茶碗を拝見しながら、私はなんだか偕楽園も水戸も、大好きになってきました。

そう、偕楽園は、入場無料。
誰がいつ来ても開け放たれています。
実は境界線も不明です。
狭い意味での偕楽園は今私の手の中にある地図の範囲。
でも広い意味ではこの辺りに庭らしき緑地帯はどこまでも広がっていて、だからその中を道路や鉄道が走っています。

案内板も順路表示も、無いわけではないけどかなり控え目。
もっと観光客の目線で考えて欲しいなあ、なんて、歩き疲れるに従って不機嫌になっていた私。
でも、人を受け入れないかと言えば、そうではない。
いつのまにかその中へ招き入れてくれていたのです。

広間には、軸と花、拝見物が残っていました。
私は心の中で一礼して、好文亭の薄暗い入り口に戻りました。

ちょっとだけ痺れた足に、靴の感触が新鮮で、足も心もすっかり元気になっていました。



[2008/06/08 21:32] 旅日記 | TB(0) | CM(4)

はじめまして! タイトルと説明に引き込まれて、いくつか記事を拝見させていただきました。 柔らかで温かくて、とても癒されました。 きっとお人柄なのだと思います。

もし、よろしかったら、リンクさせていただいてよろしいでしょうか? 頻繁に見させていただきたいので。 どうぞ よろしくお願いいたします。
[2008/06/09 13:03] シャイドリーマー [ 編集 ]

シャイドリーマーさん、こんにちは
ようこそお越し下さいました。そして、あたたかいコメントをありがとうございます。こんなささやかなブログを見つけて、気に入ってくださって、とっても嬉しいです。
リンク、ありがとうございます。とても喜んでいます。これからの励みになりそう。シャイドリーマーさんのところにも、またゆっくりお訪ねしますね。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
[2008/06/09 15:15] ここ [ 編集 ]

ここさん、こんにちは。

偕楽園!
昔、閉園後の真夜中に忍び込んだ(?)ことがありますよ!

夜桜ならぬ夜梅です。

あの時撮った写真は今も大事に
時々引っぱり出しては加工してみたりしてます。

バシャバシャ写真を撮ってると
ちょっと離れた草叢から鈴の音が聞こえてきたのでした。
きっと猫が春の夜の散歩をしてたんだと思います。
[2008/06/13 23:58] フタバ [ 編集 ]

フタバさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
偕楽園の、あの深い梅林の真夜中!本当に今の時空を越えてしまいそう。夜の写真って、うまくとれるものですか?よかったらいつかまた見せてくださいね。それにしても、忍び込む(?)なんて、フタバさんたら。
水戸は不思議なする気がするところでした。バスも充実していて、安くて乗りやすくて、みんながゆったり乗ってて。何となく一昔前の安心して暮らせる街みたいな感じがしました。
[2008/06/14 07:57] ここ [ 編集 ]

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