梅の約束 

こんばんは
終日、細い雨が降りました。

今日、人と会う約束をして、めったに行かない町にでかけました。
少し早く着いて、改札口で、ぼんやりと待ちました。
ずいぶん前の約束でしたから、覚えてもらっているかどうか、少し心配でした。
そこは幼い頃、中耳炎になる度に、母に手を引かれて来た町でした。
大学を卒業してから、またピアノを習ったのも、この近く。
帰りに喫茶店に寄るのが秘かな楽しみでした。
建物も昔のままで、駅前は色あせて、自転車の人が目立ちます。

これが花の咲かむをりは来むよ。

なんと曖昧な約束でしょう。
私はずっと待っていたのでした。
初めの花が咲いた日は、今日がその日かと喜びながら待ちました。
もっとたくさん咲く日のことだったかと、花が増えるのを喜びながら待ちました。

母親に手を引かれて、色の浅黒い女の子が通ってゆきました。

レッスン用の手提げを持った娘さんが、楽しそうに喫茶店のドアに手をかけました。

花も皆咲きぬれど、音もせず。

はて、約束したのは私の方だったか。
ずいぶん長い間待った様な気がしました。

待っていた人が、時間どおりに改札口に来ました。
コーヒーを飲みながら、簡単に用事を済ませて、電車の乗り場まで送って別れました。

私はその後もしばらく、久しぶりの駅前の風景を見ていました。

なほ頼め梅の立ち枝は契りおかぬ思ひのほかの人も訪ふなり

私は、傘をさして、ただ待っていました。




[2008/03/04 23:50] 日記 | TB(0) | CM(0)

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