桑の実 

おはようございます。
今日も曇り。
朝の涼しい風が、私の所まで届いています。

桑の実、知っていますか。
「山の畑の桑の実を 小籠に摘んだはまぼろしか」
という、あの桑の実です。
今年の実は、そろそろ終わりそうです。

私がいつも見る桑の木は、畑の桑ではなくて、山の木です。
桑の実は、葉の陰になりながら、枝先に向かってたくさんの実がつきます。
それらは、順にでもなく、一斉にでもなくて、少しずつそれぞれに赤くなってゆきます。
赤くなりかけの、赤黒く熟れたの、実になっていないの。
そういう、いろんな姿で、一つの枝に連なっています。

実の色を選んで、指先でちょっいっと折りとって、つまんで口に運びます。
赤黒く熟した実がいいのです。
いいと言っても、木の実です。
もぞもぞして、甘酸っぱくて、小さいから何だかよく分かりません。
どんな味だったかもう一度確かめようとして、もう一つ摘んで食べます。
まだ熟さない実は、透き通るような赤色です。
あんまりきれいなので、そのうちつい採って食べたくなります。
食べるとやっぱり酸っぱくて、口をすぼめます。
そしてまた、熟れた黒い実をとって食べます。

こんな所までは誰も来ません。
しーんと静かな場所で、一人摘んでは食べます。
次第に何か見られてはならない営みであるような気がしてきます。

ふと「野菊の墓」にも、桑の実を食べるシーンがあったなあと思い出します。
秘密でも何でもないはずの二人の中に、言ってはいけない気がする何かが入ってくるその場面です。

高校生の頃は少しも楽しめなかったその小説を、大人になって読み返した時、本当に涙が出ました。
何かつらい目にあったわけではないのに、それは不思議なことでした。

ただ毎日暮らしてきただけなのに、今はこんなにもこの物語が悲しく思われてしまう不思議。

見えないはずのものが見えてくること。
知らなくてよいはずのことを、いつの間にか知っていること。

甘くもなく、優しくもない、この桑の実を、もう一つ、もう一つと口に運ぶこと。





[2007/06/21 09:56] 日記 | TB(0) | CM(8)

ここさんこんばんは。
桑の実と聞いて、素通りできなかったまき衛門でございます。
ここさんは素敵な場所をお持ちなのですね。現し世にも、心の中にも。
植えもん屋では、実は桑の木を売っております。最初はその実がきれいだったので何となく仕入れたのですけれども、そのうちこの木の実が、たくさんの人の思い出を喚起する存在なのだと気付いたのでした。みなさん桑木の実にまつわる子どもの頃の話を、それはそれは嬉しそうに私たちに話してくださる。
ああ、この木は毎年仕入れなくてはいけないかもって、思ってしまいました。徐々に自然が失われていくこの町で、一本の桑の木が、大人を無邪気な子どもの顔に変えていくことのせつなさ。
私が植えもん屋であることの意味も感じつつ。
[2007/06/21 23:07] まき衛門 [ 編集 ]

ここさん、こんばんは

あの日の桑の実に染まった指さきと唇は秘密なのです。
[2007/06/22 01:22] わど [ 編集 ]

桑の実が降ってくる~~

誰もいない公園の木椅子に坐っているとうしろでポトンいやドサかな・・・まるでクスサンマユガが木から落ちるような不気味な音・・・に一瞬ドキリ。遠くまた近くで落ちます。そしてぴたりとその音は終りました。意志を以って止めたように。3センチ内外の細い赤い実が散っていす。その木に名札をみつけました。イヌクワと書いてありました。私の坐っている頭上まで枝を張っていたのです。小籠に摘んだ桑の実はもっと赤黒くそしてこんなに大樹ではなかったような・・。
さくらんぼや桑の実は青春の秘密めいたものがなくもないですね。
「甘くもなく、優しくもない、この桑の実を、もう一つ、もう一つと口に運ぶこと。 」をしながら
ここさんの頭の中は研究のことでいっぱいなのかも~~。


[2007/06/22 09:21] ろしなんて [ 編集 ]

まき衛門さん、こんばんは

物を扱う仕事はいいなあと、心からうらやましく思いました。その物を通して、人の思い出にも触れていくことができる。そしてそれが植物だというのは、本当にかけがえのないことだと思いました。
木の実を採って食べたことって、なぜか忘れられませんよね。
美しいコメントに心から感謝しています。ありがとうございました。
[2007/06/22 20:22] ここ [ 編集 ]

わどさん、こんばんは。
わどさんのコメントは、男性のことばだからこそいいのでは、と考えました。
わどさんにも、木の実の思い出がありますか。
青梅の実も木の実ですね。
なぜか切ない感じがしてくるものですね。
[2007/06/22 20:25] ここ [ 編集 ]

ろしなんてさん、こんばんは
イヌクワというのもあるんですか。いつも行くお散歩の山は今イヌビワが実をつけています。イヌ~というのは、どうも分が悪いようですね。
研究は気が散って集中できていません。用意周到に取り組めば、徹夜したりしなくてすみそうなのに。そろそろ頑張ろうって、毎日思っています。
[2007/06/22 20:30] ここ [ 編集 ]

はじめての二個目

木の実の思い出はいろいろあります。あるということに、気づかされました。木の国生まれ、しかも高校生までをそこですごしましたから。グミ、野いちご、桃、夏みかん(スイカ、トウモロコシ、スカンポは木の実じゃないですね)。
入道雲のしたで、もいでもらった夏みかんの大きな実に爪をたてて皮をむきます。果汁が飛び散る。あたりが香りに包まれる。そうやって喉をいやしたんだなあ。久しぶりに帰てみようか。でも、あのころの子どもたちは、もう誰もいないんです。

※考えが乱れて集中できないときは、どっかに理解できていない事柄が潜んでいるもの――これをマクシムにしています。利用するチャンスはほとんどありませんけど。
[2007/06/23 13:42] わど [ 編集 ]

わどさん、こんばんは。
里帰りしててお返事遅くなりました。
コメント2回もしてくださって、うれしいです。
紀の国って、木の国だったんですか。なるほどー。スカンポ、こないだ娘と一緒に口に入れたら、苦酸っぱくて、少しも思った味ではありませんでした。不思議でした。
そうなんです。理解できないことだらけです。
なんとかしなくちゃなー、と思いつつ、どうすればいいのかなー、と時間がたっていくんです。
[2007/06/24 21:29] ここ [ 編集 ]

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