海水浴 

こんばんは
七月も今日で終わりです。

海に行きました。
泳ぐつもりではなかったのに、海を見るとやっぱり。
急遽着替えて海へ。
バッシャーン。
つめたーい。

平泳ぎで、沖へ向いてすすみます。
一緒に行った家族から離れて一人で泳ぎます。
水がだんだん冷たくなって、いい気持ちです。

大騒ぎしている娘や姪っ子が見えています。
砂浜に立てた濃い緑色のパラソルが風に揺らいでいます。

砂浜で、ごそごそっと着替えて泳いで、
終わったらシャワーなしで車の中で着替えて、帰りに温泉。
あんまり泳げなくても、こういうところだけは、海の子。

浜辺の砂の感触が、今も素足にじんと思い出されます。




[2007/07/31 23:33] 日記 | TB(0) | CM(5)

花火 

こんばんは
今日は少し涼しい晩です。

夏祭りで、夫の里へ帰っていました。
山の中の、村という方が似合う小さな町ですが、毎年夏祭りには花火が上がるのです。
娘には、私の昔の浴衣を着せました。

夜店が、町の古い街道筋のところどころに、灯をともしています。
ヨーヨーつり、かき氷、金魚すくい、大判焼き。
おもちゃの屋台は特に人気です。
このお祭りの夜にだけ現れる、不思議なおもちゃ屋さんです。
ネックレスや、拳銃、羽のついたペンとか、お人形の家具。
子どもたちと、その後ろの大人達。

今は無くなったけれど、町の名物だったおまんじゅうが売られています。
商工会の前の広場の特設ステージでは、ハワイアンが演奏されていました。
前の方はござ席です。
席はたくさん空いているものの、でもたくさんの人が見ています。
司会者は、慣れた感じの女性です。
次は何とかいうプロの歌手の歌だそうです。
昔、東八郎が来て歌ったことがあるんよ。上手だったよって、そばにいたお祖母さんの話。
ずっと前にも誰かから聞いたことがあります。

娘は、とっくにいとこと一緒にどこかに行ってしまいました。

花火が始まるようです。
橋のところから、見ることにしています。
ずっと前に、橋から見るといいよ、と義母が教えてくれました。
夫と二人、欄干の去年と同じあたりにもたれながら座りました。

花火が上がり始めました。
間もなく、隣に座った人が抱いている子が、怖がって、泣き出してしまいました。
そういえば、娘も初めての花火の時、大泣きになって、困り果ててすぐに帰ったのでした。

結婚以来毎年、私は、この橋の、このあたりに座って、花火を見ているのだと思いました。
浴衣を着ていたり、子どもを抱いていたり、楽しかったり、悲しかったりしながら、この花火を見ているのだと思いました。
花火の明るさが、この小さな町全体を照らし出していました。

そういえば、祭に帰らなかった年も、何回かあったのでした。
そういう年は、夏祭りの花火を、義母は一人で見るのでしょうか。
ここから一人で花火を見たのでしょうか。

幼い頃両親と見た、宮島の花火
もう誰と見たのか忘れてしまった錦帯橋の花火

幾重にも重なりながら、開いては落ちてゆく花火を見ながら、
私は以前のことや、この先のことを、ぼんやりと考えていました。

ひときわ明るい花火が上がって、
それから次々にいろいろな花火があがって、
そして、今年の花火は終わりました。

夫が無言で立ち上がりました。
さっきまで止まっていた夜のお祭りが、また始まっていました。
その中を、夫とならんで、私も黙って帰りました。








[2007/07/31 00:08] 日記 | TB(0) | CM(0)

おばあちゃん家 

こんばんは
夜になっても、なかなか昼の余韻から抜けられずにいます。

写真集をいただきました。
私家版の、小さな写真集です。
小さな写真が20枚。
友人のお祖母さんの家が写っています。

明るいお庭。
カレンダーが貼られた冷蔵庫。
玄関の手押し車。
どの写真にも、光が柔らかく差し込んでいます。

縁側から座敷の奥まで。
磨りガラスの窓や、裏の屋根の波板をとおして。
私にとっては、見知らぬ土地の、見知らぬ人の家の写真です。

お風呂場。
廊下。
昔のままの壁の落書き。
テレビの上の東京タワーやこけし人形。
それなのに、どれも懐かしい場所の写真のようでした。

その家を包む、穏やかであたたかい光。
そして、その光の中で、今も、みんなが暮らしています。
子どもたちは、いつまでも小さいままで、きっと、日が暮れるまで、どこかで遊んでいるのでしょう。

今は誰も暮らさなくなったお祖母さんの家。

この家に、静かに降り積もってきた、暮らし。




[2007/07/26 23:27] お友達 | TB(0) | CM(2)

本に刻む 

こんばんは
夏の夕方は、何だか、目に見えない何かの境目という感じがしますよね。

少し前から探していた本を、今日ようやく借りることができました。
その小さい本の表紙を開けると、青いペン字で、
「三森隆夫兄 昭和七年一月二十五」と中央に書かれていました。
そしてその下に署名がありました。
贈り物だったのでしょうか。

その崩し字の署名を見ているうち、ふと気づきました。
それは、この本の著者の名前なのでした。

こんな字を書く人だったんだなあ。
何か、どこか、泣きたくなるような、真剣な人生を送ったこの本の著者の、
その筆跡なのでした。

裏表紙を開けると、隅っこに
「1932.1.27 着本 Ta」とありました。
Taは、おそらく隆夫のTaでしょう。

80年近くも前の、真剣な人々の間の物語に、少しだけ触れた瞬間でした。

私は、以前から、父の学生時代の古い本に、どれも日付があるのを知っていました。
それに倣って、日付を入れていたこともありましたが、
次々本を買うようになって、もしも古本で売るときに価格が下がるかな、なんて、つまらないことを考え始めて、しないでいました。

私もやっぱり本に日付を入れることにしよう。
それから蔵書印も押しましょう。
私のは、父が石を彫ってくれた、洒落た蔵書印です。

父が刻んでくれた私のイニシャル。

二度とは来ない、その日。

本にまつわる、私自身の物語。




[2007/07/25 21:52] 日記 | TB(0) | CM(6)

火曜日 

こんばんは
本格的に暑くなってきました。

あんまり暑くて、夕方になった頃には、すっかり週末気分です。
ランニングシャツ。
サンダル。
よろよろ行く自転車。
半ズボン。
街の人たちが、何だかみんな、すっかりくつろいでいます。

あの女の人、たくさん買い物して。
いつもより、ちょっとご馳走しようと思ってるのかも。
どうやら、みんな、今日が週末だって気がついたらしい。
素早いなあ。

踏み切りが鳴り始めたのに、誰も急ぐ気配なし。
白かった月が、ちょっと光ってきました。

こんなに夕方が長いのは、やっぱり週末だからだと思います。

そうだ、ビール買って帰ろっと。






[2007/07/24 22:02] 日記 | TB(0) | CM(0)

夏休み 

こんばんは
梅雨明けだそうです。
暑い一日でした。

午後、小学校のプールの監視員をしました。
プールは子どもたちでいっぱいでした。

そういえば、子どもの頃って、午前中涼しいうちに宿題をしなさいって言われて、
午後になるともう遊び放題。

となりの駅の向こうの、広々としたところへ行きました。
前から行ってみたかったのだと思います。
そこには、見渡す限り青田原がひろがっているのでした。
何の日陰もなくて、ずっと向こうに堤防が見えていました。
それぞれ、手にぴんぴんした草を持って、青田の中のあぜ道を、一列になって歩きました。
何でこんな所を歩いているんだか、誰にも分からないし、誰もそんなことを言う者もいなくて、ただ歩いていたように思います。
堤防の向こうにあるはずの海は、全然見えなくて、
でも風が海の匂いでした。

結局、堤防の所まで行ったのか、どうやって帰ったのか、少しも覚えていません。
覚えているのは、広い広い青田原と、海の匂いの風。

プールの水面が、明るく揺れています。
いつまでたっても夕方など来ない、そんな夏休みの午後です。





[2007/07/23 21:33] 日記 | TB(0) | CM(4)

誇らしい仕事 

こんばんは
夕刻、我が家の辺りは、雨上がりの霧に包まれていました。

小学校は夏休みに入りました。
娘は六年生なので、明日から毎日、ラジオ体操にラジオを持って出かけます。
そして体操が終わったら、はんこを押します。

なんと誇らしい仕事でしょう。
母親の私も、娘が明日からこの仕事をすることが、自慢でなりません。

娘は、一年生の時から、毎年ほとんど休まず夏休みのラジオ体操に行きました。
今、自然とそのことを思い出しています。

私は、誇りに満ちたこの気持ちを、いつまでも覚えていたいと思っています。
もしもいつか、自分の仕事の意味や価値が分からなくなった時、
この気持ちを思い出せたらと思うのです。

いつも一緒に遊んでいるお友達の、紙のカードに判を押すこと。
その仕事のかけがえのない喜び。

十人足らずの朝のひととき。









[2007/07/22 22:45] 日記 | TB(0) | CM(0)

草色の帯 

こんばんは
湿度が高いせいでしょうか、水の中にいるような晩です。

泊まりがけで母がやって来ました。
毎年この時期に、お茶のお友達と、講習会に出席するのです。
こういう用事でもないと、なかなか来てもらえません。
父は、何か用があるとかで、お留守番です。

夕方、母は一日目のお茶を終えて、少し疲れて我が家に到着しました。
三日間通うそうです。

父からのメール。

「私は今日も散歩をしました。
ママも日ごろは一緒に歩いていますが、この二三日は疲れたと言ってました。
特に何もしなくても疲れるようで、ルルを愛用しているようです。
体が重いのに気持ちばかり先走るのではないかと思います。
ハッスルせずに自重されたい。
世間では其の道しるべとしてバス代を100円にしているらしい。
助けが要るようならこちらも鞭打って出かけますが。
3日間は無理ではないですか。考えてください。」

この春、両親は、自治体のバスが100円になりました。

私の部屋に、母が明日着てゆくという絽の着物が、かかっています。
白地に小さな縞柄。
帯は草の色です。



[2007/07/20 23:38] 家族 | TB(0) | CM(2)

名前 

こんばんは
夜になると、電灯のまわりに、どこからか小さい虫が集まっています。
昼間とは別の場所のようです。

今日、クリーニング屋さんから、不思議な話を聞きました。
もし、飼い犬のしつけがうまくいかなくて、困った犬になってしまったら、名前を変えるとよいのだそうです。
家族で、申し合わせて、その犬を、急に新しい名前で呼ぶのだそうです。
犬は、初めは混乱しているけれど、次第に新しい別の犬として生きるようになるのだとか。

突然、まわりの誰もが、私を別の名前で呼び始めたら。
私は、新しい私を生きるようになるのでしょうか。

だいじなキトリ。
キトちゃんって言ったら、必ずこっちを見てくれるね。
だから、必ず目が合うんだよね。
キトリのまっ黒なお目目。

キトリ、キトリのこと、だーいすきだよ。





[2007/07/19 23:48] 家族 | TB(0) | CM(4)

すもも 

こんばんは
曇っていても暑い一日でした。

ここさんは、夕方涼しくなってから、お散歩をしていました。
ここさんが、ふとそばの小川をのぞいてみると、川底に真っ赤なすももが転がっています。
この川はとても水が少ないので、どんぶらこでなく、ごろごろと転がってきたのでしょう。
家に持って帰っておじいさんと割ってみると、すもも太郎が出るのでしょうか。
ここさんは、しばらく見ておりましたが、なんとなく拾うのをやめて、また歩いてゆきました。

しばらく行くと、またもう一つ転がっています。
すもも太郎がもう一人です。
ここさんは、ちょと立ち止まりましたが、やっぱり拾わないで歩いてゆきました。

しばらく行くと、またもう一つ転がっています。
三人目のすもも太郎です。
ここさんが、また拾わないで行こうとするのを見て、すもも太郎が、深い川底から叫んでいます。

おーい、おーい。

ここさんは、その声を聞きながら、知らん顔して歩いてゆきましたとさ。

おしまい。









[2007/07/19 00:06] 日記 | TB(0) | CM(0)

夏の野菜 

こんばんは
だんだん暑くなりました。

永い昼がようやく終わる、夏の夕方、
お野菜をざくざく切って、お鍋で煮ました。

ピーマン トマト きゅうり かぼちゃ なすび とうもろこし
ゴーヤー おくら 

夏のお野菜はみんな、とてもきれいな色をしています。

きれいだな、きれいだな、って言いながら、ざくざく切ってゆきました。
きれいな色のお野菜たち。

みんな食べてしまって、お鍋はとっくにからっぽです。






[2007/07/17 22:47] 日記 | TB(0) | CM(9)

星の夜 

こんばんは
今夜は曇りですね。

昨日のキトリのお散歩は、少し遅くなってから出かけました。
日の永いこのごろですから、薄暗くなってからのお散歩は久しぶりでした。
だあれもいない草の道を、キトリと二人、歩いて帰りました。
月見草が、足もとにたくさん咲いていました。
夕方になると空を向いて咲く、レモン色の小さな花。
この花の正しい名前を、何度聞いても忘れてしまって、今も月見草としか知らないままです。

日の暮れた草の道をゆく、私とキトリの足もとを、星のようにまばらに、不規則に、この花が照らしています。
この小さな花々に導かれて、私とキトリは進んでゆきます。

地を照らす、たくさんのレモン色の星。

家へ向かって歩くキトリと私は、いつのまにか空にいて、懐かしい景色を見下ろしながら、星空を歩んでいるのでした。






[2007/07/16 21:09] 日記 | TB(0) | CM(2)

映画を見に 

こんばんは
台風一過、今日の空は、記憶に残りそうな青でした。

映画を見に行きました。
結婚前にしばらく住んでいた町です。
人の気配のする町に住みたいと思って、選んだ町でした。

車を駐めて映画館まで歩きました。
喫茶店、質屋、洋裁屋、写真屋、金魚屋、呉服屋、肉屋。
休日のせいか、シャッターが閉まっている店がほとんどです。
いつもより澄んだ空気の中の陽ざしが、あんまり明るくて、全部が昔めいて見えます。
人影もなくて、とても静かです。
クリーニング屋のご主人の高い声、定食屋のやさしいご夫婦。
花屋だった所のテントが破れています。
冷たい話し方をする、きれいな奥さんのお店でした。

映画館は、以前はポルノ映画しかやっていなかった映画館でした。
今は、単館系の映画がかかります。
わずかなスペースのロビーに、ビニールの椅子とちゃちなテーブルが置かれています。
入り口からすぐに中の入り口。
昔ながらの小さなスクリーンが見えています。
座布団の置かれた座席。
壁にはしごが立てかけたままです。
「非常口」の小さなランプ。
隅っこにスツールが重ねられています。
お客はまばらでした。

映画が終わって、駐車場まで、私と夫は、陽ざしの中をゆっくり歩きました。
ガード下の、装飾過剰の小さいレストラン。
「あの店で、何か食べたことなかったっけ」
「ううん、ないよ。」

崩れてゆくような気配のするこの町。
あの頃し残した、言葉にならない何か。

私と夫は、何ひとつ変わらないようでいながら、すっかり変わってしまったこの町の様子に、気づかないふりをして、歩いてゆきました。

いつものように、当たり障りのない話をしながら。



[2007/07/15 22:05] 日記 | TB(0) | CM(7)

台風が来る 

こんにちは
いよいよ台風が近づいているようです。
風が激しくなってきました。

さっき、台風に備えて、買い出しに行ってきました。
パンやら、お野菜やらお肉などなど、抱えきれないほど買って、これで二、三日は大丈夫。
映画を見るかも知れませんから、ポテトチップスも買いました。
おはぎも買いました。
これは、おいしそうだったからです。
昨日本屋さんに行った時に買った軽めの小説があるから、雑誌は我慢しました。

風がいよいよ強くなってきました。
向こうの山の木々が葉の裏を白く見せています。
昔、大きな川のそばにすんでいた時、雨の中、母と増水した川を見に行ったのを思い出しました。
濁流が、堤防のすぐそばまで押し寄せていました。
風が強くて、吹き飛ばされそうでした。
風に向かって立っている母に、「危ないよ。帰ろうよ。」って、子どもの私が必死に叫んでいます。

締め切った家の中。
私は、玄関の間の畳の上に横になって、外国のいろんなお話が載った本を握りしめたまま眠ってしまいました。

母親の私は、ご飯をたくさん炊いて、おにぎりを作り始めます。
たった三人の我が家では、食べきれないほどのおにぎり。
台風の中の家族のいろんな顔を思い出しながら、私はたくさんのおにぎりを作り続けています。
停電が来て、ろうそくの中で過ごしたこと。
そんなことが本当にあったのか、今ではもうわからなくなりました。

この家はオール電化だから、停電したらもうどうしようもありません。
そんな今の話と、ずっと前の台風の夜が、私の中で混じり合って、
私はおにぎりを作り続けています。

一夜明けて、大きな窓から、木っ端で散らかった道が見えている、明るいリビング。
テーブルの上の、色あせたたくさんのおにぎり。

すべて、いつか見た光景。




[2007/07/14 18:10] 日記 | TB(0) | CM(9)

合歓の花 

こんばんは
台風が近づいているそうですね。

夕方、霧雨の中、ねむの花を見に行きました。
正確に言うと、ねむの花が散るのを見に来たのでした。

実は、去年もここに来て、長い間、ねむが散るのを眺めていました。
ご存じでしょうか。
意外なことに、あの、淡い空気のような花は、散る時が来ると、花の形のまま、まっすぐ下に落ちてゆくのです。
ふわりと、ではなく、すうっと真下に、
さびしいほど、ただまっすぐ落ちるのです。
向こうのほうで、今度はすぐ目の前を。
流れ星のように、不規則に。

私は、去年と同じ場所に、傘をさして立っています。
辺りは、大きく広がったねむの枝にすっかり包み込まれています。
どのくらい、ここにいたのでしょうか。

ねむの花が咲いています。

大きく腕を広げたような形のねむの大木。
ここは、ねむの花が咲くのにふさわしい、静かなところです。

今、一つ、花が落ちました。




[2007/07/13 21:56] 日記 | TB(0) | CM(2)

プールの時間 

こんにちは。
雨が上がりましたね。

昨日、島の小学校に行きました。
午後、日も差してきて、水泳ができることになりました。
子どもたちは大喜び。

バスをお願いして、全校で、隣町の小学校にある共有プールに出かけます。
朝乗ったときには、とうとう降りるまで、乗客は私一人だったバスが、子どもたちでいっぱいになりました。

先生も、みんなプールに入ります。

一番できないグループの子は、5人。
浅い方のプールで、顔をつける練習です。
5秒間浸けていられたら、次のグループに行けます。
高橋先生が大きな声で「いち、にい」って数えます。
かなちゃんは、鼻の先くらいしか水に浸かっていません。
けんとくんもあっというまに顔を上げてしまいました。

となりのグループは、わにさんの練習です。
体を伸ばして、水の中に、手をついて静かに進むわにさんは、3人。
あとのわにさんは、座って泳ぐまねをしたり、立って向こうへ行ってしまったり。

次のグループは、深いプールです。
バタ足で進みます。
浜松先生の「ここまできてごらん」っていう声が、ずっと何回も何回も聞こえています。
手を引いて、後ろに下がりながら、息継ぎのたびに、一緒に「ぷは~」って声をあげている加藤先生。
教頭先生の背中に誰かがぶら下がっています。

どの子を見ても、目が合います。
「先生見ててね」って、どの子もどの子もみんなそう言っているのが聞こえます。
「うん、見てるよ。」
めちゃめちゃなクロール。
ヘンなバタ足。
あれあれ大きく曲がっちゃた。
立ち上がるとすぐに、「見てくれてた?」「どうだった?」って、こっちを見ます。
「見てるよ。」ってにっこり。

「先生、ピン持ってて」って、ピンクの帽子の子が、プールサイドの私の方に手を伸ばしました。
3年生かな。
光るもようの細いヘアピンが2本。

わにさんだったゆうなちゃんが、水に浮こうとしています。
先生が、お腹のところを抱いています。
前に出されたゆうなちゃんの指が固まって、かちかちに力が入っているのが分かります。
浅いプールの水面に、明るい光がゆらゆらしています。
先生の手の上の、ゆうなちゃんの小さくてまっすぐな体。

加藤先生が、自分の肩にかなちゃんの両手をのせて、向き合ったまま水面に下がっていきます。
「いち、にい、さん、し、ごっ」

白い金網で囲まれたプールの中の時間。
明るい、水面の光の中の、永遠と同じ5秒。

私は、小さなヘアピンを握りしめています。
この世界に入る鍵のように。

「見てるよ。ずっと見てる。」ずっと。




[2007/07/12 12:42] 教育 | TB(0) | CM(5)

用の美 

こんにちは
梅雨の晴れ間です。

時々のぞく貸しギャラリーに、昨日は陶器が並んでいました。
私は時折ここに来て本を読みます。
スギゴケの狭いお庭。
穏やかなご夫婦の、いかにも定年後の楽しみという時間に、ひととき同居させていただくのです。

中央の丸テーブルに、お茶碗と、コップがのせられています。
厚手の鉢、コーヒー茶碗、四角い皿、花瓶。
器は、いかにも民芸といった、どれもどこかで見た気がする器でした。
私は軽く一回りして、さっさと席に座ります。
向こうに座って、主人と話している痩せた男の人が、どうやらこれらの器の作家のようでした。

お店に作業服の男の人が入ってきました。
丸顔で、楽しげな、その作業服の人は、すぐに、主人と親しげに話始めます。
お客さんとも何ともわかりません。

「アマチュア無線は女性が少ないよ。だから私と同い年の女性が、今でもみんなのマドンナなんだあ。」
「オープンカーっていうのは、夏は暑いらしいね。」

東北なまりの作家もまじっての、とりとめの無い話。

「JRの信号の仕事、しばらくやったけどね。」
私もなんとなく打ち解けてきて、聞きながら少し目線を交わします。
私はふいと立ち上がって、また器を見に行きました。

青い釉薬のかかったいかにも瓶という花瓶
赤みがかった背の高いコップ。

柳宗悦らが情熱を傾けた民芸が、何となく骨抜きにされて、この狭い店の中に並んでいました。
「40年やってるんです。実際に飲んでみてもらったら、わかってもらえる思うんですけどね。」
東北なまり。

手にとって、裏を見ると、「1500円」と書いたシール。
昼下がりの、どこかで聞いたような話。
どこかで見たような器。
今度は女性たちが数人入って来ました。

小さいの何か一つか二つ、買ってもよかったな。
街の幹線道路を運転して帰りながら、並んでいた器を思い出しました。

どこかで見たような気がする。
どこで、誰と、いつ?

覚えてるとか忘れたとかいう以前の、ただの暮らし。
はじめからいる家の者。
区切れなく続いてきた時間の全部。
ただ、ずっと前から。








[2007/07/08 11:31] 日記 | TB(0) | CM(3)

クロちゃん 

こんばんは
今は雨がやんでいます。

四日前、ご近所のクロちゃんが、亡くなったそうです。
何という種類か知りませんでしたが、
まっ黒で、毛がもじゃもじゃしてて、とにかく大きいワンちゃんでした。
「何て名前ですか」って聞いたら、「クロ」って言われて、
なるほど、と思ったのを覚えています。

考えてみたら、私たちがこの家に越して来た頃、飼い始められたのだと思います。
でも、もう十分な大きさでした。
一駅向こうの歯医者さんのところに、白黒ぶちの、同じような大型犬がいて、
兄弟だという話でした。
どちらも、あんまり大きいので、みんなが知っていました。
その兄弟は「ウッシー」という名前でした。
これもなるほど、と思いました。

クロちゃんは、朝4時になると、必ずウオーって声をあげていました。
それから、のっしのっしとお散歩に行くのが日課でした。
夏になると、毎日アイスクリームをもらっていました。

昨日の晴れ間に、クロちゃんがいた大きな大きな小屋が解体されました。

娘が、クロちゃんに乗りたいって言ってたけど、結局まだのっていません。
私だって乗りたかった。

もうすぐ夏。




[2007/07/06 23:23] 日記 | TB(0) | CM(3)

七夕 

おはようございます。
少し晴れ間が見えてきました。

もうすぐ七夕ですね。

一年に一度しか会えない織り姫と彦星の物語。
一年に一度。
子どもにとっては、永久に来ないのと同じです。
子どもの頃、それは耐え難いほどかわいそうな物語でした。

今は、思いあう二人の幸せがせつないほど分かります。
たとえ一年に一度の逢瀬であっても。
それが、ただ一度であっても。
幸せな二人の物語なのだということ。

七夕、晴れるといいですね。




[2007/07/05 10:05] 未分類 | TB(0) | CM(6)

かささぎ橋 

おはようございます。
雨が上がるようです。

七夕が近づいてきました。

大阪の交野というところに、遠い親戚にあたる人が住んでいます。
交野には、実際に「天野川」が流れて、そこに「鵲橋」が架かっているのだそうです。
そこを今はバスや車が走っているということでした。
彼は画家です。
今は展覧会に向けて、「空」と題した絵を描いているのだとか。
そんな話を聞いて、めずらしく歌を詠んでみました。




「空」遠く地に永らへて天野川かささぎ橋を幾度も渡る


「空」描きをりし少年現世のかささぎ橋を越えてゆきけむ


現世のかささぎ橋と天野川それとは知らぬ人の行きかふ





歌を勉強したことはありませんので、恥ずかしいけれど、気楽な気持ちでもあります。
どうぞ御批評、添削くださいね。








[2007/07/05 09:17] 未分類 | TB(0) | CM(10)

濡れて歩く 

おはようございます。
雨が降り続いています。

私は今、雨のかからない家の中にいます。
乾いた服を着て、窓から雨を眺めています。
そのはずなのに、何となく私の身体の中に雨が入ってきて、
私は静かに濡れてゆきます。

夕方、外に出てみると、土砂降りの雨になっていて、
傘のない人たちが、何人か途方に暮れていることがあります。
自分もその人たちにまじって、軒下に立っています。
私は、朝、母が持たせてくれた傘を持っていました。

私は、名前を知らない人に、「どうぞ」と傘を差し出します。
その人は、すこしだけ驚いて、やがてその傘を差して道路へと出て行きます。
しばらくその人の後ろ姿を見送ってから、私は反対方向へ歩き出します。

私は次第に濡れてゆきます。
髪の間に、雨がしみこんできて、頭が冷たくなります。
歩くたびに靴の中がぐちゅぐちゅと鳴ります。
セーラー服が、ずっしりと重くなってきました。
そのうち、服の中までぐっしょり濡れて、冷たくて、少し寒くなって。
家は遠くて、ずいぶん歩かなければなりませんでした。

濡れ果てて家に着く頃、私はなぜか、顔をあげて歩いていたように思います。
あの時の、目の前を降る雨の筋が今でも見えるように思うのです。

どうしようもないほど濡れて帰ってきた娘。
ちょっと笑いながら「困ってる人に貸した」って言う。

叱られた記憶はなくて、次の日、すっかり乾いた制服を着てゆくことに、何の不思議も感じていませんでした。

あの頃、そういうことが、何回かありました。

雨の中の、遠い記憶です。







[2007/07/04 11:28] 思い出 | TB(0) | CM(0)

二楽章 

こんばんは
7月になりました。
月が変わるだけで、何かいいことがありそうな気がします。

娘のピアノがずっと聞こえています。
昔、私が同じ年のころ弾いていた曲です。

最近すっかり大人びた娘。
ずいぶん前から、母親は絶対的な存在ではありません。
欠点の多いお母さんの私。
娘はこのごろよく「ママが面白い人でよかった。」って言ってくれます。
それから時々、私に言い聞かせるような口調で、「ありがとう」って言うのです。

ゆっくりした2楽章の、おだやかな音符の並びが、
娘のやさしさと重なって聞こえています。




[2007/07/01 21:28] 家族 | TB(0) | CM(7)