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工場跡 

こんばんは
今日は6月晦日。
茅の輪くぐりの晩です。
赤い満月が昇ってきました。

むかし、「重工」と呼ばれていた工場が閉鎖になって、ずいぶんたちます。
今日、久々に近くを通ってみると、そこは跡形もなくなって、更地になっていました。
大きな鉄の門の間から、誰もいない広い敷地が見えました。
地面には、ダンプのタイヤ跡が、何重にも斜めに走っていました。

愛想も何もないセメントの塀はそのままで、
だだっ広い跡地と、周囲のごちゃごちゃした町とを隔てています。
塀ぎわの所々には、高い楠の木が残っていました。

門衛所も、箱のような大きな建物も、黒っぽい空気も、嘘のように何もなくて、夕方の空が見えました。

ここで働く人々の声が、ごちゃごちゃとこだまして、混じり合って、
働くことのつらさとか、悩みとか、時々の楽しみとか。
ああ、そろそろ退ける時間。
みんながこの門から一斉に出てくる。
歩く人も、自転車の人も。
男やら女やら、嬉しそうなのもいれば、感じの悪い人もいる。
工場の広い中央が、狭く思えるわずかな時間。
この頃は、日が長くて、それでも楽だと思える。
絵に描いたような煤けた工場。

もう終わりの時間が来ているのに、どうして、誰も出てこないんだろう。

みんな、ここで、ずっと働き続けている。

そんなに良くはなかった。
それなのに。





[2007/06/30 21:41] 日記 | TB(0) | CM(1)