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発表会 

こんばんは
今日は五分咲きになりました。

今日は娘のピアノの発表会でした。
先生は、私の父と同じくらいの年齢の方です。
ご専門は歌なので、今日のピアノのお弟子さんは10人。
先生のお孫さん3人も含めての人数です。

区民センターのスタジオの舞台には、ただピアノが一台あるだけ。
発表会によくある大きな花飾りや、ドレスアップした子供たちや、華やいだお母様方の姿は見あたりません。
プログラムは、白い紙に10人の名前と、演奏曲目が書かれただけの一枚です。
その中には、一人も、難しい曲が弾ける、すごい子はいません。

プログラムは小さい順、進行係は先生ご自身です。

「さあ、始めましょう。」という、先生のいつもの穏やかなお声で、発表会は始まりました。

小さな女の子のバイエル。
一番前の席におられる先生も、お客さんも、みんな、じっと、子どもたちの音楽に耳をすませます。

そういえば、去年、一番上手だったのは、小学校低学年の男の子でした。
彼が弾いたのは、短くて単純な曲だったのに、ちょっとひき込まれるような感じがしたのを覚えています。
耳慣れた練習曲が、ひとつの立派な音楽となって、大人の私の中に届いてきます。

子どもたちの中にある、それぞれの時間と音。

白いワンピースを着た私の娘が弾く、ソナチネと、ブルグミュラー。




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[2007/03/29 23:51] 家族 | TB(0) | CM(4)

帰り道 

こんばんは
家の前の桜が三分咲きです。

夕方の、まだ明るい時間、バイパス、高速と運転して帰ってきました。
周囲に人もなく、建物もない車だけの道がずっと続きます。
それも通い慣れた道になりました。
スピードが出ているので、運転に集中していると思います。

でも、そんな帰り道、時折、忘れていたずっと以前のことが、ふっと浮かんでくることがあるのです。

学生時代の下宿の窓からの眺め。
桜の木がありました。
お隣の4階建てアパートの広い芝生とやさしい竹藪。
手作りの小花模様のカーテン。
カラーボックスの上の電話機。

電話を待っていたこと。
もう掛かってくることはないって、わかってた。
我慢して我慢して、こちらからは掛けなかったこと。

箱のふたをきっちり閉めて、取り出してみることのなかった思い出。

何処にいるのか、今はいつなのか、分からなくなってしまいそうな道路を、運転して家へ帰る私。

よくがんばったね、若くて幼かった私。
ちょっと泣きそうになる。

向こうに、料金所のゲートが見えてきました。



[2007/03/28 23:07] 思い出 | TB(0) | CM(2)

応援団 

こんばんは
今日は静かな春の一日でした。

近所の高校の野球部が、甲子園に出ています。
先日から、練習の声もしません。
今日は生徒たちも、皆応援に出かけたのでしょう。
何かとても人が少ない気がします。

このあたり、日の暮れる前は、いつも何となく人影があるのです。
あっちでも、こっちでも、畑にいたり、家の前を掃いたり、ゴミを焼いたりしながら、毎日飽きもせず、立ち話をしています。
私も、娘が熱でとか、この間実家に帰ってきたとか、この頃のことをちょっと言いかけて、通り過ぎます。

そういえば、今日は、そういう姿がありません。
もうすぐ夕方なのに、洗濯物が、干したっきり。
そういえば今朝、娘が小学校から預かった、民生委員さんへのお手紙を届けに行ったら、お留守だったって帰ってきました。
ポストの前にいつもいる、やさしい丸顔のおばさんも、姿が見えません。

どうやら、このあたりの農家の人たちは、バスを仕立てて応援に出かけたにちがいありません。

竹本さん、おじいさんとおばあさんも連れて行ったんだ。
ご主人を亡くした秀子さんも。
あのけちのご夫婦も。何でも興味津々の奥さんも。
仲がいいも悪いも。

みんなでバスに乗って、甲子園まで。

ははははは。
何だかとってもおかしくなって、私は一人で大笑い。

皆さん、お留守の間に、梢に少し花がさきましたよ。




[2007/03/26 23:42] 日記 | TB(0) | CM(2)

フランス菓子 

こんばんは
暖かい一日でした。

ずっと以前に、フランス人の奥さんが始めたお菓子屋さん。
そこの喫茶室で、朝のひとときを過ごしました。

ケーキも、家庭的な焼き菓子も、箱の色も、何もかも、フランスの雰囲気です。
みんなパリが素敵だと言うけれど、私はこれまで、その街に憧れたことはありませんでした。
よく知らなかったせいでしょうか。

木のテーブルと椅子。
クロスは、桜色の無地に、大きな花柄の上掛け。
フジタの絵の複製。
雑誌入れの籠。

ウエイトレスの女性は、クールだけど、気の利く人のようでした。
さりげなく、開きすぎた窓を、少しだけ閉めてゆきます。
ちょっと薄暗い店内には、フランス語の、少し古い感じの曲が流れていました。

そこは、ずっと昔住んでいた町にいるような、そんな気がする場所でした。




[2007/03/25 23:53] 日記 | TB(0) | CM(4)

花人の里 

こんばんは
今日は一日雨でした。
桜の芽が、いっぱいにふくらんで、今にも開きそう。
まだ咲いていないのに、なぜか木全体が、ピンクに見えます。

長い間、4月に新学期を迎えてきた習慣のせいでしょうか、
3月の終わりの今、自分自身が、このいっぱいにふくらんだ桜の芽のように感じられます。
そんな気がすることありませんか。

我が家のリビングの大きな窓のすぐ前に、大きな桜の木があります。
花が咲くと、このあたりの人が、みんなここへやってきて、静かなお花見は昼夜続きます。

農家の人も、勤め人も、みな花人となる一週間。
私は、毎年ガラス越しにその光景を眺めています。

不思議な里だなあと思いながら。


[2007/03/24 23:15] 未分類 | TB(0) | CM(5)

風の中の声 

こんにちは
今日は暖かい一日でした。

私のうちの近所でも、ようやくつくしが出始めました。
たぶん、今日一斉に。

裏山へは、車が通れるくらいの広い道が、ずっと奥まで続いています。
一番上の家をすぎて、少し行くと、もうすっかり山の風情。
薄暗い林の中の道をゆっくり登ります。
空気がしんと冷たく感じられます。
今日は夫と一緒です。
流れが、足のずっと下の見えないあたりで音を立てています。
すぐそばに、ちいさな青いふきが並んでいるのを見つけました。

木々の中をふと見ると、こんな高いところなのに、石垣があります。
棚田だったのでしょうか。
このあたりにも家があったのでしょう。
田があって、家があって。
明るい、働き者の家族の声が、聞こえてくるような気がしてきました。

もしかすると、その家族にも、悩みとか、悲しみとか、そういうことがあったかも知れません。
でもきっと、長い長い時間がたって、家さえ無くなってしまう頃には、それはすっかり忘れられていたでしょう。
そして、木で覆われ、風景さえ定かでなくなってしまった今、そのころの声だけが、風の中に残っているような気がいたします。

裏山に続く坂の途中にある私の家。
いつかここが木で覆われ、石垣だけが残る日が来た時、
ふと訪れた人が、私の家族の声を聞いてくれるでしょうか。

娘の弾くピアノの練習曲。
キトリの吠え声。
散歩に行くよって誘う声。

ここは、眺めのよい場所です。




[2007/03/23 22:34] 日記 | TB(0) | CM(0)

泳ぐ女 

こんばんは
今日は少し、暖かでしたね。

あれ以来、水曜日の午後は泳ぎに行くと決めているので、休日の今日も、泳ぎに出かけました。
もう一人の自分が、こうして決めたとおりに行動する自分を、不思議な人のように眺めています。

混んでいると思ったプールは、いつもよりすいているくらいでした。
30代か40代のちゃんとした感じの男の人が、3,4人、無言で泳いでいました。

子供達はどこに行ったのでしょう。
他の家族連れは、どこに行ったのでしょう。お墓参りでしょうか。
母親たちは皆、この休日を子供と過ごしているに違いありません。

私は無言で、一般コースを泳いでいる、その見知らぬ男の人たちと、ぶつからないよう気をつけながら泳ぎます。
すれちがったり、あとさきになって進んだり。

昨夜、娘が熱を出して、今はもう下がったけれど、家で一人寝ています。
立派な母親なら、今日は家にいるはず。

平泳ぎ。
いいちい、にいいいって泳いだらいいみたい。
今までのリズム、違っていたんだ。わかった。
いいちい、にいいい。
今までより少し早く進む。うまくできるようになったみたい。

見知らぬ女が一人、一般コースを、無言で泳いでいます。





[2007/03/21 23:26] 日記 | TB(0) | CM(0)

叔父のこと 

こんばんは
明日はお彼岸。亡くなった方の話をしてもいいでしょうか。

つい先日、山男だった叔父が亡くなりました。
調子がよくて、ちょっと偉そうで、実はあまり好きでない叔父でした。

叔父は、若い頃から、世界中の山に登っていました。
中学生の頃、叔父が学術調査隊と一緒にヒマラヤに上がった時に、おみやげにくれたヘンな手提げ袋を気に入って、毎日使っていたような気がします。

叔父の家は、雑木林の中の坂道を上ったところにあって、
通夜に行く夕暮れ、深い山のにおいがしました。

灌木に囲まれた庭には、山のお仲間がたくさん見えていました。
山男たちは、なぜかそれと分かるような気がしました。

見違えるほど立派になったいとこが、親族代表で挨拶をしました。
「父は、皆さんが、彼のパーティーに加わるのを先に行って待っています。」
一見少しも似ていないのに、調子のいいところがそっくり。

残された働きものの叔母は、参列の方に、にこにこと応対をしていました。
その間、叔父は登山帽をかぶり、ハイキングに行くような出で立ちで、棺の中ですやすやと眠っておりました。

ふたりはいつものヘンな夫婦でした。



[2007/03/20 23:52] 日記 | TB(0) | CM(6)

無人駅 

こんにちは
今日は風の強い一日でした。

小さな半島の海岸沿いを回るローカル線に乗りました。
列車は2両編成です。
駅に止まるたびに、運転手さんが出てきて、降りる人の切符を集めます。
きれいに掃かれたプラットホームには、金盞花が、一列に植えられています。

ブロックで作った、小さな小さな駅舎。
白い鉄板にラッカーで書かれた「主要駅までの運賃表」に、遠い町の名前が並んでいます。
待合室のベンチには、毛糸でくるんだ座布団が置かれていました。

今は、誰もいないけど、きっと、すぐに息を弾ませながら誰かが戻って来る。

無人駅。



[2007/03/19 23:18] 日記 | TB(0) | CM(4)

午後の冒険 

こんにちは。
今日はちょっと早めのキトリのお散歩。
明るい陽ざしの中の広い道を二人でとことこ行きました。

オオイヌフグリの青い星が、一面。昨日までと比べて急に増えています。
わっ、つくし。一本だけ。今年初お目見え。
ちょっと日陰の高校の裏門。そこに、ちょん、ちょん、ちょんとまっ黄色のたんぽぽ三つ。
ここで、キトリのリードをはずします。
つくしが出たんなら、探してみよう。
ケガをして、好物のつくし採りに行けないすみれちゃんのことを思い出しつつ、斜面を登って山へ入りました。
キトリは大喜びで、先へ行ったり戻ったりしながらついてきます。ちょっと奥まで冒険。
野いばらがあちこちに青い葉を伸ばしていました。

何となく嬉しくなってきた。
斜面を駆け下りて、向かいの斜面に駈け上る。キトリ興奮してダッシュ。
二人はそのまま走って裏門へ。リードをつけて、また走っちゃう。
しばらく行くと、去年つくし野原だった休耕田。つくし、あるかな。
でも、入ったら、ひっつきバーが、つきそう。これは細長い草じらみのこと。
ちょっとだけ入って探してみよう。
広い休耕田。きゃー。草の中に足がずぶずぶ埋まって、気がつくと、進めないし戻れない。
もう、どうなってもいいや、進め、進め、行っちゃえ行っちゃえ。

つくし、影も形も無し。やっと、向こうの道に出た。
キトリ全身ひっつきばーだらけ。頭も背中もお腹も足もしっぽも。
私、足がちくちく。ひゃあ、スカートのすそ、絶対千本はひっついてる。
帰りながら、一生懸命ひっつきバーを取る。家に着いてからも取る。
取っても取っても、無くならない。靴下にも、スカートの中にも、下着にまで。
やれやれ。
というところで、急に美容院に行こうって思い立つ。
二ヶ月くらい前、かわいくなりたくて、パーマかけた。今は跳ね跳ねの髪。さっぱり切ってしまおー。

陽の当たる美容室は、お休みでした。
帰りに、薄いピンクのマンサク。

前の家の白木蓮が、ネコヤナギみたいな額を落として、明日は咲きそう。

[2007/03/18 23:12] 日記 | TB(0) | CM(2)

リリィ 

おはようございます
いいお天気になりました。

おととい、テレビで寅さんを観ました。
「寅次郎ハイビスカスの花」です。

リリィさんが、何て綺麗なんでしょう。
私の眼は、あふれるほど魅力的なリリィさんにくぎ付けでした。

「男の世話になるなんて、まっぴらだよ」って言う。
歌を歌って稼いでる。

実は、若い頃この映画を観たとき、はすっぱなリリィを少しも綺麗だと思えなかったし、あまりいい感じがしませんでした。
そのあと、何年か前にも観たはずなのに、印象に残ってない。
でも、今度はちがいました。
そのかわり、前には何の不思議もなく観ていたことが、分からなくなっちゃった。

リリィさん、寅さんのどこがいいの?

寅さんがカタギじゃないこととか、稼ぎがないことはどうでもいい。
でも、寅さんたら、好きとも何とも言ってくれないじゃない。
積極的な意思表示も、行動も、特になし。
見返りを求めない優しさ?

それに、リリィさん、もう十分ひとりじゃないの。
それなのに、どうしても一人で生きることを選んじゃう。
結局、寅さんの優しさも、風が頬に当たるのを感じるように、ただそれを感じているだけ。
いろんなことは、もう十分なんだね。
寅さんなら違うかもって思わないんだね。

ただ、それだけでいいっていうこと。


[2007/03/18 10:21] 日記 | TB(0) | CM(0)

ついておいで 

こんにちは
東京に初雪のたより。昨夜はしんと冷えましたね。

春の夕暮れ。
昨日の帰り道は、駅から家までの間、誰にも会いませんでした。
向こうの、田んぼや畑のあたりは、もう、日暮れていました。

こんな時、知らない人が現れて、
「おいしいお菓子をあげるから、おいで」って言われたら、ついていってしまいそうだなって思いました。

子供の時、こう言われても絶対ついていっちゃいけませんっていわれていたけど、内心
(そんなこと言われなくても分かってる。ついていくわけない)って思っていました。

でも今は分かる。
大人がそう言っていた気持ち。
大人はみんな寂しいから、いつも気をつけていないと、本当について行ってしまうんだ。

それに、もう大人だから大丈夫って思ってる。

あぶないあぶない。
[2007/03/17 11:03] 未分類 | TB(0) | CM(4)

キトリがやって来た 

おはようございます
今朝は少し曇っています。
庭のゆきやなぎが真っ白に花をつけました。

昨日はキトリ2歳のお誕生日でした。
「おめでとう」って騒いでも、いつもとかわらずストーブの前でのんびりのキトリでした。

キトリは、2年前のゴールデンウイークに、我が家に来ました。
あの頃は、時計と、残った体力と相談しながら、駆け抜けるような毎日。
そこに、ちっちゃいキトリが、青いお買い物籠に入って、飛行機に乗ってやって来ました。

キトリにとっては、お留守番ばっかりの毎日だったよね。

何でもすぐ口に入れちゃう。
脚を骨折したとき撮ったレントゲンで、お腹にいろいろ写っていました。
何でも囓る。
ダイニングのいすの脚。
みんなの靴。特に上等の革製や、飾りがついたかわいいのが好き。
玄関の壁。
みんなが大好き。
お客さまにすりすり。
強そうな犬には、すぐに降参。
虫が来ると網戸にかまわずアタック!
失敗や秘密は隠します。
おしっこの失敗のあとは、まずいなあ、ってお顔でばれちゃう。
お庭に宝物の靴下を埋める。

朝夕のお散歩がだーいすき。

もう、キトリのせいで、忙しさ倍増!
その上、しばらくして、夜寝る前に、いっぱいお話しして、いっぱい撫でてあげないといけないって気がついてしまいました。
もう体もすごく大きくなって、抱っこなんか出来ないのに、だっこしてって言ってるのが分かってしまう。
何にも言わないのに、全身で、こんなにも伝えてくる。

家にいても、ゆっくりする時間も気持ちもなかった毎日の中に、ぽっかりとできた、キトリとの時間。
「いい子ねえ、キトちゃん。」
「あんよ、かわいいね。」
「ふわふわだね、キトちゃん。」

時間がないから仕方ない。
疲れてもう動けない。
二階では、そんな、ことばにならない言葉を聞きながら大きくなった娘が眠っています。
とっくに抱っこが出来ないほど大きくなって。

あれから仕事をやめて、私は今日も家にいます。
キトリは、日の当たる窓のところで、お腹をみせて眠っています。


[2007/03/14 10:17] 家族 | TB(0) | CM(2)

菜の花の 

こんばんは
よく晴れて、少し冷たい一日でした。

菜の花の匂い、おぼえていますか。

ある人の「菜の花の香りが一番好き」という言葉が心に残っていました。
それで、夕方のキトリの散歩のとき、菜の花の咲く畦を通って、そっと顔を寄せてみました。

あ、菜の花の匂い。

この花の匂いが一番好きという人の清冽。



[2007/03/12 23:24] 日記 | TB(0) | CM(4)

給食のエプロン 

こんばんは
今日は一日風花が舞っておりましたが、夕方のキトリのお散歩の頃、少し青空になりました。

明日は月曜日。
娘が学校から持って帰っていた、給食のエプロンにアイロンをかけます。
先週が娘の当番で、うちで洗ってアイロンをかけたエプロンは、だれか次の当番の子が着るのです。
うちの子が着るのではないけれど、やっぱり丁寧にアイロンをかけます。

私が子供の頃から続いている、この小さな受け渡し。
私のしたことが、ずうっと大きな円を描いて、また私のところ、私の子供のところへ戻ってくる。

私たちは、輪の中にいます。あなたも。


[2007/03/11 23:45] 日記 | TB(0) | CM(2)

トウシューズ 

こんばんは
雨になりました。

今朝、街に買い物に行きました。
娘のトウシューズです。

トウシューズは、うすいピンクのサテンでくるんだ小さな靴です。
細いひもで、履き込み口を絞り、サテンリボンを足首に巻きます。
靴底の部分には、足よりふた回り小さい堅い革があたっています。
それは、決して表の道を歩くことのない、布製のくつです。

娘が歩き始める前、真っ白い革のファーストシューズを準備しました。
歩けるようになったら、その靴を履いて外へ出かけるのです。
しっかりした作りの、その白い革の靴で、晴れた日の地面を歩く娘。
その日を心待ちにしながら、私は、幼い娘がくつに慣れるようにと思って、赤いフェルトで小さなくつを作りました。
部屋の中で、ただ履いてみるだけの、やわらかいフェルトのくつでした。
柔らかい足をくるむだけの、くつにならないくつ。

トウシューズを買うときは、足にぴったり合っていないと痛いので、たくさんのものを、何度も履いてみることになります。
小さな鏡と木製のバー。
「1番の足にしてください。」
「プリエしてください。」
「6番にしてください。」
「プリエしてください。」
「立ってみてください。」
そしてサテンリボンを踏まないようにしながら、娘は静かに爪先立ちます。
「どうですか。」

何度も何度も。
履いては脱ぎしたピンクやオレンジのサテンのくつが、あたりいっぱいに並んでゆきます。
娘の足は、娘の足でしかなくて、どれが足に合っているのか、娘にしかわかりません。
お店の人も私も、ただ、心配そうに「どう?」と聞くだけ。
娘が、そのたびに聞き取れないほどの小さい声で何か言います。
同じことが何度も繰り返され、並べられてゆくトウシューズ。

ようやく決まったその一足を履いて踊る、つかの間の時間。
それは、娘にとってどういう時間なのか。
母である私は、その意味も知らず、手応えも知りません。

決して表の道を歩くことのない布製のくつ。
ただ、表を歩く固い靴を履く前に、少しでも。




[2007/03/11 00:41] 家族 | TB(0) | CM(2)

ひととき 

こんばんは
春の寒さの中、さくらんぼのなる桜が満開です。

喫茶室は、美術館の中庭に面していて、芝生の中庭が見渡せます。
数本の木と、そういえば、彫刻もおかれていました。

「すずめ、かわいいね。」
「小さいのもいるよ。」
「見て、いっぱい木にとまってる。」

たった1時間しかいられないのに、こんな話。

それでも、気持ちがとってもあったかくなりました。
[2007/03/09 23:27] 家族 | TB(0) | CM(6)

春色のセーター 

こんばんは
今朝は、いっとき一面の雪化粧でした。
ようやく「冬」が来て、やっと何だか気が済んだような。

今日、バスの中で、素敵な女性を見かけました。
昼間のバスはすいていて、のんびりした気分でした。
ふと見ると、手編みらしいセーターの、柔らかいピンク色が、運転席のバックミラーに映っていました。
細かいゲージで、首元が模様編みになっていて、つやつやした糸の質感。
私は、しばらくセーターに見入った後、バックミラーの中のその人をしみじみ見たのでした。
初老といってよい年齢のその人は、上品で、ちょっとだけ厳しい感じのする人でした。
優しいピンク色が、色の白いその人にとても似合っていました。

たくさんの年月や、いろいろな出来事を経て、それから、
春の街に、春らしい色の手編みのセーターを着て出かけること。




[2007/03/09 00:54] 日記 | TB(0) | CM(0)

ほとけのざ 

こんばんは
今日も寒い一日でした。
外は明るくて、ガラス越しにつんと冷たい外が見えていました。

つくしが大好きな、お友達のすみれちゃんのために、つくしが出るのをずっと待っているのですけれど、今年はまだのようです。
去年、つくしが出ているのを初めて見つけた時、その見つけた一本を採ろうとして手を伸ばすと、そのあたりに、たくさん生えているのに気づきました。
そのつくしをせっせと採りながら、ふと見ると、そこだけでなくて、あたりにいっぱいつくしが生えているのです。
ここ、つくし野原だったんだあ。
さっきまで、どうして気づかなかったんだろう。
それは、本当に不思議な体験でした。

そういえば、お腹に子供ができたとわかったとき、街に妊婦さんがたくさんいることに驚きました。
それまで少しも気づかなかったのに。

今年は暖かかったせいか、このあたりでは、ホトケノザが冬中見られました。
ホトケノザは、小さな赤い花をつける雑草です。
暖かくなってからは、あちらにもこちらにも、本当にたくさん咲いています。
土手、田の石垣の元、休耕田。
見渡すと、遠くまで、あちこちにあの赤い色が見えて、群生しているのがわかります。
葉の形が、仏様の台座に似ているという、小さな野の花の群生です。

その葉の台座一つ一つに、本当に仏様がいらっしゃるような、
小さくて、穏やかな野の花。


[2007/03/08 00:13] 未分類 | TB(0) | CM(4)

手乗り文鳥 

おはようございます。
今朝、ほんの一時、ちらほらとみぞれ雪。
見上げると、空はとても明るい春の空でした。

この頃、ひよこ草があちこちに元気よく生えてきました。
見るからにやわらかそうな明るい緑色の草です。
ひよこ草を見るたび、以前飼っていた、白い文鳥のことを思い出します。
野の匂いがするだろうかと、時折これを鳥かごに入れてやっていました。
野の匂いなど知るべくもない、生まれてまもなく家に来た小鳥でしたのに。

なるべく外の風にあててやりたくて、仕事のない日など、鳥かごをよく外に吊しておりました。
機嫌がいいと、よく鳴いてくれました。
彼女は、生まれてまもなくの時、
「お仕事されていると“手乗り”にはなりません」と言われてしまった、そんな我が家に来てくれたのでした。
つがいで飼うつもりだったのに、
「文鳥は、よほど気に入った相手とでなければ傷つけあって死んでしまう」
とも言われて、一羽だけでやって来たのでした。

手乗らぬ文鳥。

いつしか、私が籠の中に手を入れると、寄ってきて、ついと指に乗るようになっていたのが、なつかしく思い出されます。


[2007/03/06 10:09] 思い出 | TB(0) | CM(2)

新幹線 

こんばんは
今日は一日中、強い風が吹いていました。

ちょうど日の暮れる頃、街を流れる川の河口近くを、車で走りました。
広い河川敷にはもう誰もいなくて、満ち潮の川面も暗くなりかけていました。
橋の手前で信号待ちをしていると、橋を渡ってゆくバスや車の列がうすい影のように見えます。

こんな春の夕暮れは、気をつけなくてはいけません。
ずっと前、大それた夢というのではなくて、当たり前の将来として、心の中に描いていた暮らしのことを、突然思い出してしまうからです。
その暮らしは、まるで実在した昔のように、なつかしく思い出されます。
それから、今、思い描いたのと少しだけ違う未来に生きていることを思い出すのです。
嬉しいとか、悲しいとかではなく、ただ少し違うだけの未来。

河口に斜めにかかる大きな橋を、白く細長い新幹線が通ってゆくのが見えました。
「見て、新幹線!」
後ろに乗っている娘に向かって言います。
娘は、とうに新幹線を見つけて喜ぶ年齢ではなくなっているのですけれど。
本当に真っ白で、流線型の、今の新幹線。
こんな遠くからでもその美しさがわかります。

ごほうびだなあ。
少し違うこの世界に、そのことを忘れて暮らしていることの、ごほうびだなあ。
私は、新幹線を見たことが、とても嬉しい。

春の夕暮れの空を行く、白い白い列車。


[2007/03/05 23:57] 未分類 | TB(0) | CM(2)

畑のおじさん 

こんばんは
ぼーっとするような春の一日でした。

夕方のキトリのお散歩は、暮れて、少し涼しくなってからまいりました。
時々お野菜をくださる畑のおじさんから、今日もたくさんお野菜をいただきました。
「あんまりいいもんじゃあないが、もっていくかね。」って、いつも決まった言い方です。
人なつっこいキトリが、まず、すりよってご挨拶。
私も遠慮なく「はい。」って言ってしまいます。

今日は、下仁田ネギをスコップで掘ってくださいました。
初めて畑の奥まで入りました。
向こう隣の畑は下の段ですから、おじさんの広い畑の前をさえぎるものは何もありません。
視界が広々と開けて、この谷じゅうが見下ろせます。
山の中腹にある学校、高速道路が、遠い物語のように見えています。

「いいところですねー。」という私の声は、聞こえてない様子。
「いい具合にできとらんが、これも持って行くかい。」
と普通のおネギ、聖護院大根とチシャとレタス。
いつも、野良着の胸ポケットに、袋まで用意してくださっているのです。
「持てるかの」

畑のおじさんは、日に焼けて、見るからに優しそうなお顔です。
子供の頃読んだ、汚い格好で現れる神様のお話を思い出します。

私はお野菜でいっぱいの袋を抱えて、お散歩の続きです。



[2007/03/04 20:25] いいこと | TB(0) | CM(0)

母より 

こんばんは
今日、夕方外へ出ると、大きな月が黄色く浮かんでいました。
びっくりするほど大きな月でした。
明日は満月です。

母が今日、家族の掲示板に書いてくれたこと。
早くにお母様を亡くされたdreamさんに、贈ります。
それから、あなたにも。

「いよいよ春ですね。
 気分一新して 良い空気の中で、しっかり深呼吸しなくては、良い運勢が、素通りしてしまいそう。
 年と共にパワーのいる事ばっかりですからーーー
 貴女も、しっかり運を招き入れて、頑張ってくださいね。
 やっぱり行動しなくては、始まりませんから。
 美味しいコーヒイが、入りましたの、又ねーーーー」

[2007/03/03 23:47] 家族 | TB(0) | CM(4)

外れない 

こんばんは
3月になりました。
ねえ、月が変わる時って、ほんの少しだけ嬉しくなりませんか。

この間から、パソコンの調子が悪くなって困っています。
今日はまた、画面が突然真っ暗。
仕方ありません。お客様センターに電話しました。

応対してくださる修理センターの方は、とてもかわいい声ですが、なかなか頼りになりそうです。てきぱきと指示をしてくださいます。
「では、ACアダプターを抜いてください。」
「ACアダプターって何でしょうか。」
「コードです。」

「では、次に、パソコンを閉じて、裏返してください。」
「はい。」
「では、バッテリーをはずしてください。」
「バッテリーってどれですか。あ、この電池の絵が描いてあるのでしょうか。」
「はい、そうです。」

「はずれません」
「左右についているロックをはずしてください。電話機を置いてくださっても構いませんので。」
と言われたので、そう言えばそうだ、と思って電話機を置く私。
言われたとおり、ロックを左右に動かしました。
それから、バッテリーをはずしにかかります。
右は外れるけど、左側が外れません。
右のロックは、押さえてないと元に戻るので、片手しか使えません。
そこで、向こうの部屋にいた娘を呼びます。
「ねー。手伝ってー。ここ押さえてて」
と娘にロックを押さえておいてもらって、引っ張るけど、やっぱり左側が外れません。
「あれー、どうして外れないんだろー。」
すきまに爪を入れると折れそうでいたい。
そうだハサミ!
「ハサミ持ってくるから待ってて。」
僅かの隙間にハサミを差し込んで離そうとするが、外れない。
「なんか、こわしそう。」
「ママがんばれー。」
「よーし」
力一杯やったら、ハサミが外れた勢いで、置いておいた受話器に手が当たってしまいました。ガタッという大きな音がして受話器が向こうへ。
「うわっ」っとあわてる娘と私。
受話器を元のところに立てて、もう一度がんばる。

「だめー、外れない!」どうやっても外れません。
ふうーっ。
私たちは、荒くなっていた呼吸を落ち着かせようと椅子に座りました。
その時、何かが聞こえてきました。

あ、電話!

それは「お客さまーっ」って絶叫しているあのかわいい声でした。



[2007/03/01 23:17] 日記 | TB(0) | CM(4)
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