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友のこと 

こんにちは。
例年になく早い梅雨入りとなりました。
今日もどんよりとした空模様、
梅雨曇りです。

出会い。

今日は、私にとっての出会いのお話をさせてください。

詩人の井野口慧子さんとの、お話です。

初めてお目にかかったのはいつだったでしょう。
おそらく、広島で、毎年、鈴木三重吉の命日に行われている「赤い鳥の会」でのことだったと思います。

その年の講演者が井野口慧子さんでした。
講演の内容は、出席された全ての方が、すんなりと受け入れるのは、難しいかもしれないお話でした。
それは井野口さんが体験された、たくさんの出会いの羅列といった内容で、
どれも少々不思議でしたし、当たり前と言えば当たり前のことも含まれていて、
言ってみれば、全体が不思議な内容なのでした。

私は、会場の後ろの方で、そのお話しをうかがっておりましたが、
ある不思議さの中で生きておられる井野口さんのこと、
井野口さんの伝えたいことが、次第に、次第に強く伝わってき始めました。

その会の後、昂ぶる気持ちをもって、少しご挨拶程度のお話をしたのだと思います。
お食事をご一緒したかどうか、記憶は定かではありません。

次の年の「赤い鳥の会」で、私は井野口さんのお姿を探しました。
私より一回り以上上のご年齢の井野口さんは、
控えめな雰囲気で、会場に座っておられました。

会のあと、井野口さんと、お友達の年若いご友人のSさんと3人、
平和大通りに面したホテルの喫茶室で、とても長い間お話しました。
なんと、井野口さんも私に会えるのではないかと思って、来てくださったということでした。
いろいろなことが話題でした。

数ヶ月後のある日、私の元へ、井野口さんの新しい詩集が届きました。
『千の花びら』です。

私はその詩集を読み、
詩とは、このように書いて良いものなのかと、心から驚いたのを覚えています。
それまで考えてもみなかったことでしたけれど、突然、私も詩を書きたいと思いました。

私たちは、本当に時折でしたが、便りを交換していました。
私はたいてい、絵はがきを送っていました。
井野口さんからはいつも封書で、いろいろなことを書いたお返事をいただきました。
いつも素敵なマスキングテープで封がしてありました。
私は、絵はがきに、お礼と共に、私も詩を書いてみたいと付け加えて、井野口さんに送りました。

ある時、井野口さんから、県立図書館での講演のご案内が届きましたが、
私はその日は、仕事でどうしても出かけられない日でした。
そのことを絵はがきでお返事しました。

それからしばらくして、
Sさんから、とても慌てたお電話がありました。
井野口さんの訃報でした。

それは本当に突然のことでした。
井野口さんと親しかったSさんは、なぜか、その第一報を、私にお知らせくださったのでした。

離れた福岡市の真ん中の小さな部屋で、
私は呆然としました。
今も私は、どこにも身の置き所がなく、呆然としたままのような気がいたします。

何事も分からずに年齢だけ重ねてきた私。
かけがえのない友を失うとは、こういうことなのかと、初めて知った気がいたしました。
幾重にも、無念が残りました。

思えば、たった2度しか会っていない私たちでした。



[2021/05/18 12:04] お友達 | トラックバック(-) | CM(0)

私の言葉で 2 

こんにちは。

「国語科教育法Ⅰ」
今年度の授業、初めに読む文章は、
随想、堀江敏幸「此処に井戸水と葡萄酒があるよ」
にいたしました。

ご紹介いたしますね。

**

それは、筆者の堀江さんの大学時代のお話です。
大学生の堀江さんは、古本屋の百円均一で見つけた「ジャム詩集」(堀口大学訳)に夢中になります。
特にその中の、「桜草の喪」の冒頭、親友のサマンを悼む詩に惹かれました。

「親しきサマンよ、
 僕はまたしても君にこの手紙を書く。
 死人に手紙を書くのは僕にもこれが初めてだ。 」

ジャム二十七歳、サマン三十七歳、
年齢も、文学的地位にも隔たりがある二人でしたが、深い友情で結ばれました。
知り合って三年後には、ジャムも世に知られることとなります。
しかしその二年後、サマンは病に倒れてしまったのでした。

ジャムは、生きているサマンにもあれこれ手紙を書いていたのだろうか。

夏休みのある日、堀江学生は、大学図書館で、サマンとジャムの往復書簡集を見つけます。
虚飾を排したどこか宗教的な厳粛さをたたえた古い図書館の大閲覧室。
彼はそこで、辞書を片手に、その五年にわたる友情の跡をたどりました。

筆者の、ジャム詩集との出会い
ジャムとサマンとの出会い
大学図書館
往復書簡との出会い

この随想には、それぞれに奇跡のような出会いが、いくつも描かれています。
そして、その出会いひとつひとつの、深さと静かさに、胸を打たれます。

この文章の冒頭には、筆者の記憶の中にある大学図書館の光景が、丁寧に描かれています。
人との出会い、本との出会い、言葉との出会い、その場所。

何かが少しでも違っていたなら、これらの静かで深い出会いは、このようなものとしては、なかったのではないか。

人にとっての、出会いと、その奇跡を、しみじみと思わされる文章です。

冒頭の詩の終わりのあたり、
ジャムはサマンに語りかけます。

「のどが渇いていないか?
 此処に井戸水と葡萄酒があるよ。」



※随想 堀江敏幸「此処に井戸水と葡萄酒があるよ」
 ( 『精選国語総合 現代文篇』 筑摩書房 2015 ) 



[2021/05/17 17:51] 教育 | トラックバック(-) | CM(0)

あなたの言葉で 

こんにちは。
お元気でいらっしゃいますか。

新学期が始まって、あれよあれよといううちに、再び授業がオンラインになりました。
ようやく軌道に乗り始めたところでした。

自宅から授業をいたします。
移動がない分、体力的にはとても楽です。
受講者の反応があまりわからないのと、資料が思うように揃わないのがちょっと難点ではありますけれど。

おかげで少し余裕が出来ましたので、
授業記録を。

**

四月の授業はまだ対面で行われていました。
「国語科教育法Ⅰ」
国語の先生になりたい、主に3年生のための授業です。

先生になりたい学生さんの瞳は、いつも理想と希望に輝いています。
ブラック職種の評判も高い中、’でもしか’(死語?)の私は、ただただ感心するばかり。

学生さんたちが夢見ている、先生になった自分がいる国語の教室。
あなたの理想の授業のイメージはどんな風ですか?

言葉を扱う、国語の授業は、不思議と言えば不思議です。
自分の言葉で、生徒と話が出来る先生にだけ、
生徒は、自分の本当の声を聴かせてくれます。
あなたの教室が、そういう場所になるといいですね。

今、この教室に、おんなじ場所にいる一人の人として、生徒の前に立つこと。
想像してみてください。
結構難しいです。

毎年、一番最初の授業は、
教科書から一つ、文章を選んで、みなさんに感想を披露してもらうことにしています。
作者についての知識とか、文章の分析とかでなくて、自分とつながっている、自分の感想の披露です。

「この文章を読んで、あなたの言葉で、あなたの感想をお願いいたします。」

***




[2021/05/17 13:15] 教育 | トラックバック(-) | CM(0)

子羊を探しに 

こんばんは。

新年度が始まりました。
先週の金曜日、第1回の「国語科教育法Ⅰ」の授業でした。
中高の先生になりたい学生さんが、第1回目は特に、はりきって受講してくれる授業です。
ですが、このご時世です。
残念ながら、急に出席できなくなった学生さんがありました。
で、このご時世、授業を録画して、欠席の学生にも見られるようにいたしました。

今日になって、先週の自分の授業をそっとのぞいてみると、
なんとまあ、
画面の中の私ったら、
まるで学校の先生みたいな、かイイイイことを言っています。
「先生と言われるほどの○○」を、引き受けるのが、先生のお仕事ですから、まあ仕方ありません。

***********

今日は、このパソコンを取りに行く、セットするとかで、とっても時間がかかってしまいました。
みなさん「私の大事な時間がもったいないじゃないか、ちゃんと予定の授業をしてくれよ」って、思った?
うふふふふ(みんな笑う)

皆さんの教室の中には、
あ、それ、あなた方が先生になって行く教室のことね。
その教室の40人の中には、そういう風に思う子どもがいると思わない?
「あいつのために時間使うなよ。こっちは受験があるんだから」とか思う子がいると思わない?
先生としてはどうしましょう。

結論として、私はね、
パソコン取りに行って、時間かけてセットしました。
では、それはどうしてか。

キリスト教のお話で、迷える子羊のお話、聞いたことがあるでしょ。
群れの中から迷った子羊が出たら、それを探しに行く。
迷ってない羊は放っておいて。
それってどうなんでしょう、ていうことですよね。

私が他の子をおいて、迷った子を探しに行くのはどうしてか。
それは、迷ってない羊たちが、いつまでも元気で迷わないかというと、きっとそうじゃないから。

子どもたちは本当に真面目で、いい子たちで、シビアな彼らの世の中を生きています。
そういう厳しいところで生きている子どもたちは、案外ギリギリのところにいたりする。
そして、学校に来られなくなった子どものことを見てる。
そして、あなたのことを見ている。

自分に何かあった時に、この人は自分を助けるのか。

迷ってない羊たちをおいといて、迷った子を探しに行って、連れ戻そうとすることは、
あなたが迷ったとき、私はあなたを探しに行きますよ。
っていう無言のメッセージになるよね。

そしてね、
迷う日が来なかったたくさんの子にも、
若い時代の学校での時間を、そういう先生や生徒がいる教室でしばらく過ごしたっていうことが、
これから先の人生、どんなに意味があるか。

この大学を卒業して、社会に出て働いているときに、
自分が迷ったときには、この人たちが自分を助けてくれるんじゃないかなって、
なあんとなく思えてたとしたら、幸せだと思いませんか。

社会がそういうところだって、なんとなく信じることが出来ているとしたら、
それはどこから来ているのか。
それはもちろん家庭だし、そして、学校の、ある教室での一年間かもしれないって、思っています。

私に何かあったら、絶対誰かが助けてくれる、誰かが助けたいと思ってくれてる、と思える何年間があったなら、
それがその人の一生の社会の見方を作っていくと思っています。
たとえ全員を信じることができないくても、この中の誰かがきっと…って思えることが支えてくれる。
だから、先生になって、たった一人でも、そんな教室を作ることができたら、すごく意味があると思ってる。

私たちは、弱い羊を探しに行く人にならなくちゃいけないのです。
教室にいる子どもたちに向かって、弱ったらあなたを探しに行くよっていう在り方を持って立っている、
私は、それが、先生ということだと思っています。

みなさんは、今から先生になろうとしていますから、
まず自分は社会をどういうものだと思っているか、自分の認識を問い直すことから初めてください。
そして、先生になるってどういうことだろうって、自分で考えていってほしいなと思っています。

この授業が、そういう授業になればいいなって思っています。





[2021/04/22 21:32] 教育 | トラックバック(-) | CM(2)

いつもの 

こんばんは。
お元気でいらっしゃいますでしょうか。

なんということもない日のことを、日記として書いておこうと思います。

今日は月一回の通院日でした。
今までは、電車を乗り継いで、一時間以上かけて行っていましたが、
今朝は夫に、車で連れて行ってもらいました。
ちょっと気持ちのいいドライブコースです。

せっかくのドライブですのに、運悪くお仕事の連絡が、ひっきりなし。
助手席でメールを見てばかりの私。
自分ながら味気ない限り。
あっという間に到着。

さて、病院が終わったら、
いつも行くことに決めている小さなフランス料理のお店で昼食。
このお店では、今では何も言わなくても、パンのかわりにそっと小さなオムレツを添えてくださいます。
それからおなじみの刺繍屋さんへ。
大切な方への贈りものに、ハンカチに名前を入れていただくのです。

年を重ねるについて、
いつもの、がだんだん増えてきて、
ささやかな、お気に入りの暮らしが出来るようになるのですね。

少し歩きくたびれて、デパート地下のいつものお茶屋さんに。
あら、お店が無くなってる。
お店を閉めるとは聞いていました。
聞いていたのに、やっぱり驚いてがっかり。

なんということもない、今日の一日。

ささやかなお気に入りが増えてくる楽しみと、
変化の楽しみ、
少しずつ変わってゆくことの寂しさも。

夕方から雨になりました。


[2021/04/12 22:13] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

卒業論文集 あとがき 

みなさま、こんにちは。
ご無沙汰申し上げております。

昨日は、卒業式でした。
略式でしたが、皆が一堂に集うことができたことを、何よりに思いました。
まあ、正直を申し上げますと、
毎年の、かなりの人数をぎゅうぎゅう詰め、保護者席もいっぱいというのでなくて、
学科の学生だけがゆったり間をあけて座っていたこと、
日頃ほとんどなじみのない、理事長や来賓の挨拶が無くて、学長の他に、今年は学科長のお話だったことなど、
アットホームで、かえって良い感じでした。

この一年、イレギュラーなこと続きで、誰にとっても大変でしたね。
4年生は、前期は図書館も使えず卒論は遅くなり、就活もオンライン、教育実習は10月。
4年生でなくても、大学生くらいの年齢の若い人たちは、いろいろなことを考え込んでしまっていたようです。
その苦しさは大人には察しきれないものであったように感じられました。

それでも、袴姿の卒業生は、屈託もなく、晴れがましく、とても眩しく見えました。
私のゼミ生も、無事、全員揃っての卒業となりました。
みなさん、本当によく頑張りましたね。

毎年恒例となりました、卒業論文集のあとがきです。


***********

あとがき 卒業論文集に寄せて


みなさん、卒業論文、本当にお疲れさまでした。

全員無事ご提出。それぞれに素晴らしい論文になりました。
私は、論文も、皆さんが頑張られたことも、大きな声で自慢したい気持ちでいっぱいです。
皆さん、本当によく頑張られました。

この一年は、本当に誰もが大変でした。

フレッシャーズセミナーで始まったここゼミ。
皆さん、新入生のためのお仕事に心を尽くしてくださって、本当にありがとうございました。

突然入学式がなくなって戸惑いでいっぱいの新入生を思い、少しでも入学気分を味わってほしいと、様々な制約や繰り返される変更にもめげず、熱心に取り組んでくださった皆さん。
そのおかげで、1年生がどれほど救われたか分かりません。

結局前期は授業も全てオンラインになり、大学図書館も公共図書館も使えないまま、ゼミもオンラインになりました。

それは誰にとっても初めての、長い一人の時間でした。

就職活動の面接もオンライン中心、教育実習は延期されて秋になり、卒業論文の進みものろのろになりました。
それでも励まし合いながら、コツコツと研究を進められた方々に、私は本当に感心していました。
一方で、どうしても思うように研究に向かえなかった方々もありました。
苦しかったことと思います。
ラストスパート、お疲れさまでした。

私たちは誰でも、それぞれに思い描く世界の中に、たった一人住んでいて、そこから容易に出ることができません。
そして外の世界が見えそうになると、なぜか身動きがとれなくなってしまいます。
でもこうしてはいられない、光に向かって伸びてゆきたいという強い願いも持っています。

卒業論文は、学問への扉です。
実は学問は、私たちに外の世界を見せてくれる魔法です。
皆さんはこの魔法を手に入れました。
大切な皆さんへの、私からの贈りものです。

どうぞ、これから先ずっと、この魔法を失くしてしまわないように、ともに暮らしていってくださいね。
大丈夫、知ってみると学問は、暮らしの中の小さなところに潜んでいますから。
他の人の話に耳を傾けること、分からないことを確認しようとすること、思い切って自分の考えを話してみること。

そしてぜひ、この魔法の力で少しずつご自身を育て、ご自身にとっての幸せを作っていってください。

この魔法とともにあなたのそばにいて、いつも応援しています。

ご卒業おめでとうございます。

心からお祝い申し上げます。

2021年3月11日

        ここ




[2021/03/12 17:14] 教育 | トラックバック(-) | CM(0)

雪 

気がつくと雪が降っていました。
世界はもう白くなっていて
よく見ると、雪が、ちらりちらりと降っているのです。
とうとう、本当の雪の日が来たのだと思いました。

雪はただ降っていました。
しんとして
それでも雪はやまりなく降っていました。

午後になると、空は晴れてきて、
道の雪が溶けてきました。

それでも雪はやみませんでした。
雪は
私の中に
音もなく
しんしんと降り続けていました。

私の中に
ただ白い雪の景色が
耐えがたい静かさで
広がってゆきました。

あの日以来
私の中には
雪が降り続けています。

私は胸に雪景色を抱えたまま
すっかり晴れた外へ出かけます

私の中には今も
雪が降り続いています。



[2021/01/11 13:51] | トラックバック(-) | CM(0)

自転車たち 

 新しい自転車が来た。
 本当は新しくなくて、娘が中学生になる時に買った娘の自転車。大人になった娘が、今度、坂の多いところに引っ越したので、自転車はもういらないって。三人で近くの自転車屋さんに歩いて買いに行った時のことが忘れられなくて、別に何があったというわけではないのだけれど。とにかくどうしても捨てないでほしいと思う。それで、大阪から福岡まで無理して送ってもらった。わがままなママの願いを叶えるために、いつもいつも、パパと娘が頑張っている。そんな家族。
 届いた自転車は、これでもかと梱包されていて、漫画に出てくる包帯だらけのけが人のようで、笑ってしまう。ガムテープやらプチプチやらを全部取ると、きれいな車体。娘が最後にきれいにしてやったのだと思う。
 懐かしさで涙が出そうな自転車を連れて、夕暮れの福岡の町をゆく。後ろのタイヤがパンクしているから、本当に連れて行くのです。
 なじみの自転車屋さん。とても優しく話す自転車屋さんのお二人。いい自転車ですね。前に何か辛いことがあって、こんなに優しい人になったのかもしれない。気持ちが柔らかくなるのがわかる。娘のなんです。もう大人になって。いい自転車ですね。タイヤ、取り替えましょうね。前も後ろもね。ああ、ここに座っててください。黄色い木の椅子。夕暮れが店の中まで来ている。
 待つ間に今の自転車を取りに行くことにした。2台も持てないから、やっぱり引き取ってもらうしかないとなんとなく分かっていた。ここで7000円で買ったら、それから私の生活に風が吹き始めた。別れるのが少し辛い。でもまたここの子になるのだから、きっと大丈夫。
 乗ると素敵によく走る。元気でいてね。福岡の街に風が吹いている。



[2020/09/30 23:17] 日記 | トラックバック(-) | CM(2)

コーヒーを持って 

こんばんは。
お元気でいらっしゃいますか。
ご無沙汰申し上げております。

7月8日に義母が亡くなりました。
このごろようやく落ち着いて参りましたので、その後のことを書いておこうと思います。
よろしければお付き合いくださいませ。

その日は義母の88歳の誕生日でした。
ご近所のなかよしの3人の方々に、お誕生日会をしていただいて、
皆さんは夕方6時半くらいまでご一緒だったそうです。
翌朝、電話で知らされました。

頭もしっかりしていて、とても元気でした。
毎日、話に来てくださる近所の方があって、
いつも一品お料理を作って、持って帰らせるのを楽しみに暮らしておりました。

いつも家のあちこちに花が活けてありました。
台所に続きの居間は、居心地のいい空間です。
いつも掃除が行き届いています。
「今日はここ」という具合に、少しずつ掃除をするのだとよく話してくれていました。
義母が居なくなった今も、メガネや薬や、何もかもがまだそのままで、
つい、どこかから帰ってきそうです。

義母がいつも座っていたところに座って見渡すと、
お気に入りの食器やかわいい小物にかこまれて、
テレビの横の棚や壁いっぱいの、私たち夫婦や娘、大家族の義弟一家の写真。
私が時々送っていた絵はがきや手紙が、手作りの飾り箱に立ててあります。

旅行や買い物など、以前は身軽にどこでもお出かけして、楽しんでいましたが、
そういえば長らく、ほとんどどこへも行かなくなっておりました。
この部屋は、ずっと前から今と同じで、
だから何も変わっていないと思っていたけれど、
この頃は、ここでずっと一人で過ごしていたのだなあと思いました。

いろいろな方に、幸せだと話していたという義母。
最後まで一度も、義母から不平や不満らしいことを聞いたことがありませんでした。
ご近所にも恵まれて、だから何となく安心していましたけれど、
でもきっと寂しいときもたくさんあったにちがいないと思います。
今になってようやく気づくなんて。

田舎のいろいろな習わしにそって、たくさんの行事を済ませ、
四十九日も過ぎました。
仕事のある私たちは、今は広島に戻っています。
義母を一人にしていたように、またこの家をここに残して。

でも、義母の大切にしていた中庭の草花たちは、今もみんな元気です。
なぜなら、毎日来てくださっていた方たちが、
今も毎日のようにこの家に来てくださっているからです。

水やりをして、
コーヒーを飲んで、
おしゃべりをして。
きっとその輪の中に、義母もいるのだと思います。

お彼岸にはまた、義母と皆さんのためのコーヒーを持って、
私もその仲間に入れていただきに行こうと思っています。

*******

最後に、一つだけ不思議なことがありましたから、書き留めておきます。
この辺りのご法事では、長いお経とお経の間に、皿盛りのお料理をお出しすることになっています。
お料理自慢のお母さんは、いつもいろんなお料理をお出ししていましたから、
葬儀の時には何人かの親戚から、ああもうあのお煮染めはいただけないのね、などと残念がられました。
だから四十九日には、今度は私が頑張ろうと、ちょっと張り切っていたのですけれど、
遠隔授業ですっかりヘトヘトの私は、やっぱり頑張れなくて、
結局、お漬物とお菓子と果物で何とかしようと夫と話し合いました。

でも、冷凍庫の奥に、お母さんのお料理がたくさんあったのです。
ふきの煮物。
金柑の甘煮。
わらびの煮物。
干し柿。

どれにも日付が書かれていて、解凍していただいてみると、お母さんの味そのままでした。
きっと今年のお盆にと思って、少しずつ作っていたのでしょう。
当日は、それらをいつものように器に盛ってお出ししました。
お母さんの最後のお料理です。
皆さんに召し上がっていただいて、
お母さんがしていたのと同じように、タッパーに入れてお渡ししました。
ふふふ。
結局お母さんに助けられて、立派なご法事になりました。

広島に帰る前に、最後にお墓に寄りました。
「お母さん、何とかなったよ」って、心の中で報告しました。
そしたら、ビックリするほど大きいお母さんの声が、
「あんた、まあ」って、
あの、ちょっと面白がっているような言い方で。

遠くから聞こえたとか、聞こえたような気がしたとか、そんなのではなくて、
もう、とってもはっきりと、大きな声で。
そんなこと、あるんですね。
あんまりビックリしましたから、ここに書いておくことにいたしました。

帰り道、ひなびた国道を走る私たちの車が通り抜けるのを待つ門のように、
大きな虹がかかっておりました。


[2020/09/13 00:59] 家族 | トラックバック(-) | CM(2)

図書館にて 

こんにちは。
梅雨。
家ごもりが続いていましたが、
昨日、どうしてもの調べもので、県立図書館へ行きました。

レファレンスへの対応で出てきてくださった方が、
名刺を出されましたので、
慌てて私も名刺入れを探します。
いただいた名刺のお名前に、私は驚いて顔を上げました。

覚えていらっしゃいますか。
はい。

副館長さんの名刺をくださったその人は、
遙か以前、なんと、教員採用試験の集団面接でご一緒した方なのでした。

あの日、試験後の興奮冷めやらぬまま、私たちは皆で近所の喫茶店に移動して、何時間もしゃべり続けました。
教員採用試験の合格が、今よりずいぶん難しかった頃です。
あのときの面接のメンバーのほとんどが合格したということを耳にしたのも、今では遠い記憶です。

面接で何を話したのか、今では全く覚えていません。
ただ、採用試験面接のはずの議論が、何か気持ちのよい意見交換の場のようであったことだけが、今もぼんやりと記憶に残っているのです。

立派になられた目の前のその人に、ご自慢の図書館を案内していただきました。
いろいろな展示や試みのお話を伺いながら、この人らしいと思っている私。
あの午後、喫茶店で話したきりで、私はこの人の何も知らないはずなのに。

人の不思議ということを思って、少しだけ怖くなります。
すっかり年をとった私が、あのときの私であると言えるとしたら、それはどうしてなのでしょう。

時間も経験もあまり意味を持たない、もう一つの世界にいる、
時間と経験をたくさん背負った姿の私。

図書館の大きな窓から、夏至に近い夕方の、明るい外の景色が見えていました。

翌朝、メールが届いていました。

いつもの食卓の椅子に座っている私。
昨日借りて帰った重い本の、表紙の厚い布地だけが、
なぜか確かなものだという気がして、
何度もその本の表紙を撫でている。



[2020/06/18 13:09] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

バレリーナ 

バレリーナという名のバラを植えた
ピンク色で一重の小さな花たちがたくさん
今年も元気に私の庭を飾っている

女の子なら一度は
バレリーナになりたいという夢をみる
本当のバレエを見たことなどなくても

バレエはやっぱり群舞が美しいと思う

有名バレエ団の群舞の踊り手は
皆すばらしく優秀で
揃えて踊る練習なんてしない
決まったフォームで決まった順に
それぞれがそれぞれの踊りを踊る

かわいくて仕方がない私の娘が
ある日、その目をキラキラさせて
バレリーナになりたいと言ったから
何もできない母親の私は
私の小さな庭にこのバラを植えた

踊り手たちが
ステージの眩しい光の中でくるくるとまわる
それぞれの踊り

バレエはやっぱり群舞が美しいと思う

一人一人の細長い手足
倒れそうで倒れない
ほんの指先だけのつま先立ち




[2020/05/30 15:50] | トラックバック(-) | CM(4)

昔話 

一週間の仕事を終えてようやく
家へ帰るために乗った列車が
夕方の桜の国をすすんでゆく

列車は速すぎて
桜の木のそばにいるはずの
誰の姿も見えない

そうだ
遠隔授業の画面の中に
桜を入れよう

まだ合ったことがない学生たちが
そこにいると信じて
パソコンに向かって話しかける奇妙な毎日は
いつか昔話になると思う

私の家の前には
とても大きな桜の木があるの
大正2年に
向かいのおじいさんが生まれた時に植えられたものだそう

おじいさんは養子でこの村に来たのだから
それはちょっとおかしいと思うけれど
昔話とはそういうものかも

少しずつ何かがまちがって
いつのまにか
家にいる私

桜の花びらが
私に向かって絶え間なく降ってくる

それとも
まちがえようのない何かだけが
昔話になるのか

桜の木のそばにいるはずの





[2020/04/10 16:59] | トラックバック(-) | CM(0)

春の彼岸に 

大阪日航ホテル15階
大きな窓から家族3人
歓声を上げながら外を見る

ずっと下の地面の
幅の広い道路には
白い矢印がいくつもいくつも
全車線一方通行右へ右へ

歩道には幾何学模様のタイル
姿勢のよい人が歩いていく
それから赤い自転車の女の子も

向かいの白い建物の
欄間の組子細工のような外壁
なんて素敵
心斎橋大丸ですって
中央階あたりの屋上広場に
赤いパラソルが並んで
あそこはきっとカフェにちがいない

街はあっという間に夜になって
大丸の玄関の
西欧風の高い装飾鉄格子が閉まるのが見える

15階のはめ殺し窓に並ぶ
3人の顔
楽しそうに見えるだろうか

窓の向こう側から
誰かが見ているような気がする
春の彼岸

大阪の町きれい
ねえ、明日はみんなで大丸に行こうね



[2020/03/30 16:22] | トラックバック(-) | CM(0)

永遠(定年後) 

駅の駐輪場はとても静かだ

係員の男たちは黙って作業をしている
自転車たちは皆きちんと前を向いて
じっと止まっている
銀糸の森が奥深くまで続く

男たちは
青い作業服の上に
今までの長い仕事の時間と
複雑で難しい人間関係の記憶をまとい
過不足のない仕事
仲が良くも悪くもなく
明るくも暗くもなく

駐輪場の契約は1ヶ月更新
何もかもが止まったこの場所に
時間は少しずつ降る

それなのに
時間は少しも積もっていない
男たちが毎日丁寧に掃き掃除をするから

ここに時間が降ることを証明しているのは
自転車に貼られたシールの
一ヶ月先の日付だけ

シールは
一ヶ月先には
男たちに丁寧に剥がされて
そのまた一ヶ月先の日付に変わる

銀糸の森に風が抜ける
時間はいつも初雪のように降っている
係員の男たちが黙って作業をしている




[2019/12/26 21:54] | トラックバック(-) | CM(0)

プール5往復 

毎週末、市民プールに泳ぎに行きます
25メートルを5往復と決めています
正味30分くらい

1往復目
私のスイミングフォームもなかなかではないかしらん
水が少し冷たい

2往復目
早くも少し苦しく

3往復目、
泳ぎながら、何のために泳いでいるのだろうと考えてる
どこかへ行くわけでもなく、25メートル行くと戻ってくるって

4往復目
どうやら私は、今でも子どもの頃、学校で習った泳ぎ方をなぞろうとしているらしい

5往復目
これで最後、ちょっと丁寧に泳ぎます

25メートルプール5往復

先週も
3年前も
5年前も

週末
夕暮れの市民プール




[2019/10/10 14:20] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

掛け時計 

8時12分前
少し急がないと

窓から見える坂道に、陽が当たりはじめてる

このワンピースにしよう
今日のお天気に似合うから

ウール毛布で手作りしたアイロン台はとても広くて
フランス製の巨大アイロンは、たいてい暴走気味

水筒にミルクティー
手帳と目薬
読みかけの本

よし
さあ出かけましょう

ちらっと時計を確認

素敵な木の掛け時計
8時12分前







[2019/10/09 02:07] | トラックバック(-) | CM(0)

空は高くてきれい 

こんにちは。
お元気でお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。

母からメール。
嬉しいので、そのままここに。

******

今日は風があって、
すすきがなびいて、
とてもすてきです。

でも、暑いのか涼しいのかわかりませんね。

空は、高くてきれいです。


[2019/10/03 14:15] 家族 | トラックバック(-) | CM(2)

ニューヨーク 午後 

さっきから、背の高い青年の話を聴いている。
金色に染めた髪。
この色褪せた黒いTシャツで、どこへでも行くらしい。
風体に似合わない、柔らかな声。

この頃、近所の人の、家の片付けを手伝いに行っているんです。
半分はおしゃべりだから
全然終わらなくて。

ニューヨークに住んでたんだそうです。
翻訳とかして。
穏やかな雰囲気の人なんですけど、
五十年も前に、女性一人で。
すごいと思うんですよね。

古い手紙の束
有名になった友人たちの名前
五十年前のニューヨーク

五十年前のニューヨーク
有象無象のアーティストたち
生活の悩み
孤独

夏の、秋の、冬の、
ニューヨークの街

喧噪
友人たち

片付けはなかなか終わらない。
半分はおしゃべりだから。

穏やかな瞳に映る、
時折やってくる金色の髪の青年

長い午後



[2019/09/29 08:45] | トラックバック(-) | CM(0)

新学期が始まりました 

新学期が始まりました。

みなさん、夏休みはいかがでしたか。
どんな風にお過ごしでしたでしょう。

よい本に出会えましたか。
どこかへ出かけた方もあるでしょう。
コンサートや映画、漫画なんかもいいですね。

心に残ったこと、ぜひ皆さんにお聞かせ下さい。
私も、私の夏休みのことお話ししますね。

では誰からお願いしましょうか。
教室の四隅の方でじゃんけんして、一番初めの人を決めましょう。

新学期が始まりました。


[2019/09/28 23:15] | トラックバック(-) | CM(0)

市内電車 

市内電車、宮島口行き
知らない人同士、向き合って座っている

白いスカートの人
虹色運動靴のお婆さん
車掌さんが車内を歩いてくる

みんなで横にゆれる
みんな、神様の島へ、がたんごとんと運ばれてゆく

小網町停留所 乗降客なし
このすぐ近くで、建物疎開動員の全校生徒が被爆
慰霊碑は、数年前に校内に移設されて、今はもうここには無い

それもいいかもしれない
みんなでまた、学校に来られたね

今日も、市内電車は、
広島の街と、神様の島の間を、行ったり来たり




[2019/08/31 02:26] | トラックバック(-) | CM(2)

深い湖の青色 

こんばんは。
お元気でいらっしゃいますか。
お盆の帰省旅行から戻りました。
お盆は、日常を離れて、宙に浮いたような、不思議な時間ですね。

母が、ベストを編んでくれました。
ずっと前に、織物のために準備していたたくさんの絹糸の中から、
青い色糸を数本合わせて。

明るくて、澄んだ水色。
その向こうの青色。
その奥に見えている深い青色。

静かで、規則正しい模様。
ラメ入りの糸がところどころで光ります。

私は嬉しくて、その青い色を長い間見ています。

あまり人が来ない山奥の湖。
複雑な青い色の水は、深みを湛えて、
水面は明るい陽にきらきら。
時々風が吹いて、さざなみが立ちます。

私は、何にもしないで、長い長い間、見ています。

いえ、湖を見ているのは、母。
それとも、母と、子どもの頃の私。
いつのまにか年をとった私。

深い湖の青色を、いつまでも見ています。



六地蔵のお一人白し秋の昼     ここ



[2019/08/17 23:34] 家族 | トラックバック(-) | CM(0)

のぞき眼鏡 

こんにちは。
おげんきでいらっしゃいますか。

暦は秋になりました。
空だけ先に秋らしくなっています。

このごろ急に本の字がぼんやりとして見えにくくなりました。
老眼が進んできたようです。

少々面倒を感じながら、
ケースから眼鏡を取り出し、
どれ、という感じで本を覗き込みます。

すると、おや、
文字が急にはっきりと見えて、
並んだ言葉たちが何か言っております。

そうそう、
本の世界って、
どれ、って覗き込むところなのでした。

子どもの頃にも、そんな風に思っていた気がいたします。
それをふっと思い出しました。


初秋や六角形のお菓子箱        ここ



[2019/08/11 00:37] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

りんどう 

こんにちは。
梅雨が明けましたね。

お仕事の帰りに、花を買いました。
りんどうです。

手の中のその色が、あんまり青くて、
あんまり青くて、

ああ、夜の軽便鉄道からジョバンニとカンパネルラの二人が見たりんどうは、こんな色だったかしら。

カンパネルラ 「誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。」

ジョバンニ 「ほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼やいてもかまわない。」

まだすっかり暮れきらない、福岡の遅い夜
浮かび上がるビルの輪郭
行き過ぎる人々

ほんとうの幸...

点滅する信号を遠くに見ながら、
家路を歩んでいます。



*********

「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指さして云いました。
 線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」ジョバンニは胸を躍らせて云いました。
「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」
 カムパネルラが、そう云ってしまうかしまわないうち、次のりんどうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
 と思ったら、もう次から次から、たくさんのきいろな底をもったりんどうの花のコップが、湧くように、雨のように、眼の前を通り、三角標の列は、けむるように燃えるように、いよいよ光って立ったのです。



[2019/07/31 18:07] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

それぞれ 

こんばんは。
今日は降ったりやんだりの日でした。
そちらはいかがでしたか?

電車が動き出して、
ホームで、
手を振ってくれている母。

小首をちょっとかしげて、
小さな女の子のよう。

この頃、少しだけ髪をのばしているせいかな。

実は、
母は、髪洗いがあまり好きではありません。

そして私も。
それから娘も。

髪型はそれぞれ違うけれど、
ふふふ、
おんなじ。

それぞれ、素敵なシャンプーを買ったりね、
しています。


半夏生手かごに糸の濃紫    ここ



[2019/07/13 22:29] 家族 | トラックバック(-) | CM(0)

今日の仕事 

お百姓さんが畑を耕すように、
私は私の今日の仕事をしましょう。

今日の私の仕事。

午前中は、授業。
国語の先生になりたい人のための授業です。

国語の先生の仕事は、
人が、生きてきた中のいろいろを伝えようとする言葉を、
生きている人として受け止めて、
その姿を子どもたちに見せること。
子どもたちも同なじように、それぞれに生きてゆくのだということを忘れないこと。

お昼休み、
教育実習が辛かった学生さんのお話を聴く予定。

午後は、
いろんな振り込みを事務室に依頼する書類を作る(苦手)。

大学に向かう同じ電車に、見覚えのある学生さんたちがちらほら。
学び舎に向かう私たち。

私は、畑に向かうお百姓さんのように、
お弁当と本の入った、重いカバンを抱えて、
学校に向かっています。



ふねきんぎょふうせんかえる星祭       ここ




[2019/07/07 15:30] 教育 | トラックバック(-) | CM(0)

緑の家 

小さな緑の家に住んでいます。
お庭に、花の咲く木をたくさん植えました。

一日中、鳥の声が聞こえています。

洗濯物を干す時も
(きじばと)

お茶の時間も
(いかる)

お昼寝の間も
(ほととぎす 遠くで)

私がいない間も

一日中、
鳥の声が聞こえています。

私がいない間も






[2019/06/20 10:20] | トラックバック(-) | CM(0)

週末 

こんにちは。
日中は暑くて、昨日の夜とは違う場所のよう。



週末

迎えに来ているはずの夫の姿を探しながら、
改札口へ。

70年前、無残な焼け野原だったこの街に、
私は、何度も、何度も、帰ってきます。

ちょうど、
変身から戻ったヒーローが、
ひと仕事終わった明るさで、
子どもたちと話しながら歩いている時間です。

夫が、人に交じって、ぽつんと立っているのが見えます。

ここでは、時計が全部、爆風の熱でゆがんでしまったせいで、
時間の流れが少しだけゆがんでいます。

改札を出ると、
この街特有の、哀しみの風が流れていました。

私は深く息を吸いこみます。



水無月の底トランクの縞模様   ここ



[2019/06/19 16:18] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

点景・厚狭駅 

こんにちは。
夕方になって、晴れてきました。

昨日は両親の家に参りました。

厚狭駅で乗り換え待ち。
新山口駅行き、上り列車を待っているのは、
私の他にもう一人だけ。
向かいの下関行きのホームには、七,八人。

線路に明るい陽があたっています。
線路の間に鉄道草が生えてきています。
ひばりが鳴いています。




[2019/06/09 16:28] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

オキーフの家 

こんにちは。
雨上がりの週末。
いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

美容室には書棚があって、
私の髪をカットしてくれている背の高い青年に、おすすめの本を尋ねると、
「オキーフの家」という写真集を見せてくれました。

かっこいいんですよね。

画家のジョージア・オキーフが、晩年を暮らした家。
モノクロの写真集です。

ニューメキシコ州の砂漠地帯。
土を四角く固めて作ったような家。

家具の少ないその家の、入り口付近の細長い棚に、
砂漠で拾ったという動物の頭蓋骨が並んでいます。
(彼らは、彼女の乾いた絵の中で、今も砂に埋もれています。)
白く乾いた骨たち。

飾りはほかに、濃い色の変わったモビールくらい。
全体にグレーがかった中で、 黒いかけらたちが目立っていました。

かっこいいですよね。
でも、だからって、頭蓋骨を買ってきて部屋に置くのは違うと思うんです。
ホームセンターで流木とか売ってるじゃないですか、そういうの。

お店を出ると、
夏至も近い福岡の街の、遅い夕闇。

私もこの街で、
私の、「骨」を探そう。

猫が道路を横切っていきました。







[2019/06/08 15:20] 日記 | トラックバック(-) | CM(0)

幸せの窓辺 

おはようございます。
いかがお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。
佳い季節ですね。

火曜日の朝は、新幹線で福岡へ移動です。
車窓は一面、緑、緑。

実家の付近を通り過ぎる頃、
両親に充てて絵葉書を書きました。
明るい色の花々に囲まれた窓辺を描いた刺繍の写真の絵葉書です。
隅に「幸せの窓辺 Ⅰ」というタイトルが記されています。


「 初夏。
いいお天気になりました。
いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

先日、福屋デパートで、戸塚刺繍展がありましたので、ちょっと覗いて参りました。
刺繍はいいなあ。
幸せな時間が形になって現れてる感じがいたします。
幸せをおすそ分けいたしますね。写真ですけど。
パパの絵も、幸せの絵だなあっていつも思っています。

今週末は、お仕事で大阪です。
せっかくなので、3人で集まることにしました。

ではまたね。 5/21 ここ 」



[2019/05/21 09:52] 家族 | トラックバック(-) | CM(0)